蒸気タービン最終段の長翼化や高効率翼の採用においては、タービンの高速回転による遠心力に耐えるとともに、優れた耐SCC(応力腐食割れ)性を有する軽量・高強度・高靱性な動翼材料に加え、その動翼を支持できる強度・靱性と耐SCC 性を有するローター材が必要となる。ローター材には現状、比較的安価な低合金鋼が用いられており、高合金鋼やチタン合金が用いられる動翼に対して、さらなる高強度化が難しい状況である。
本研究では、強度・靱性と耐SCC 性に優れた大型の鍛造ディスク部材を開発し、ローターの最終段に適用することにより、火力発電および地熱発電設備の効率向上と大出力化を達成し、温室効果ガスの排出抑制と電力価格の低減を通して、我が国の産業競争力強化と経済発展に貢献する。
長翼化や高効率翼の採用には、その動翼を支持するローター材の高強度化が必要であり,以下の課題を解決する。
超微細結晶粒組織を部材の適材適所に創製することにより,靱性と耐SCC性に優れた1200MPa級高強度タービンディスクを実現する。
火力プラント高効率化のため620℃超級蒸気タービンの需要が見込まれるが、ロータ材としてフェライト鋼は620℃級が限界であり700℃級A-USC用Ni基合金はコスト面で課題がある。軽量なTiAl合金を動翼に適用できればロータに作用する応力が低減されフェライト鋼ロータの耐用温度を650℃以上に向上できる。本研究では東工大 竹山が提案するβ相を活用した組織制御とMHPSがプラントメーカとして有するノウハウ・製造設備を用い、動翼に適した高靱性・高強度な材料・プロセスを開発し、実翼試作により検証する。図はβ相を活用した製造プロセスの概念図であり、本プロセスにより割れなどの問題無く鍛造できることを確認できている。水蒸気中でのTiAl合金の使用例はないため、水蒸気中の酸化・クリープ挙動の解明および信頼性評価も行う。