資料4

開発課題名「超高感度スピン相関高分解能NMR装置の開発」

(平成27年度採択:最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ)

チームリーダー :  藤原 敏道【大阪大学 蛋白質研究所 教授】
サブリーダー :  中村 新治【(株)JEOL RESONANCE 技術部 開発グループ 主事】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)JEOL RESONANCE、福井大学
T.開発の概要
 高分解能NMR(核磁気共鳴)法は分子の構造解析方法として極めて重要であるが、感度が低いという弱点が存在する。近年、NMR法の感度を向上させる技術のひとつとして、DNP(動的核偏極)法が注目されており、本開発チームはこれまでに世界最高性能のDNP-NMR法の開発に成功している。本課題では、極低温検出法と極低温高磁場でラジオ波とサブミリ波の多重パルス照射により、感度がさらに100倍以上向上した装置を開発する。そして、細胞内生体分子や材料界面の原子分解能構造解析を行えることを実証し、将来的なプラットフォームへの導入と活用を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)極低温高分解能13C-NMR
 ヘリウムガス閉鎖システムによる極低温での試料回転機構について、直径3.2 mmのローターに対して、温度40 Kで目標の回転数を達成した。試料回転およびラジオ波強度の安定化を図ることにより、低温で高分解能固体NMRの測定ができることを実証し、40 Kで7倍以上の感度向上を得た。
(2)サブミリ波電子スピン二重共鳴
 二台のジャイロトロンの出力を合成して、10 Wのサブミリ波出力を5 %以下の出力変動で安定的に得ることに成功した。単一周波数のサブミリ波照射により、27倍のNMR感度向上を達成した。また、サブミリ波領域での二重共鳴を行い、DNPによるNMR感度を25 %増大させた。
V.評 価
 生体高分子の構造解析などに必須となる高分解能NMR分光装置として、DNP法の感度性能を大幅に向上させるだけでなく、実用性のある装置を製作することを目的としている。中間目標の数値はすべて達成されており、開発が順調に推移しているものと認められる。一方で先行製品の性能も向上しており、開発製品の優位性を明らかにして差別化を図る必要がある。また、本技術の普及に関しては、事業化戦略を明確にしつつ、最終目標達成に向けて技術開発を着実に推進すべきである。
 本開発課題は、当初の目的通りに進捗しており、当初の計画に沿って推進すべきと考える。[A]