資料4

開発課題名「新規近赤外蛍光団の開発と実用的蛍光プローブの創製」

(平成27年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  花岡 健二郎【東京大学 大学院薬学系研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 本課題では、新規な近赤外蛍光団及び近赤外蛍光プローブを開発することで、生命科学や分析化学など幅広い基礎科学研究において有用となる蛍光試薬(蛍光プローブ)を提供することを目指す。特に650 nmから900 nmの近赤外領域の光は、低い自家蛍光や高い生体組織透過性など多くの利点があり、近年、マルチカラーイメージングにおける新たなカラーウィンドウとしても期待されている。本課題において開発する蛍光団は、これまでに汎用されてきた近赤外蛍光団であるシアニン色素と比較しても多くの優位性があり、国内外への大きな波及効果が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)新規蛍光団の合成法の確立
 新規蛍光団非対称Siローダミン類の合成ルートの最適化を図り、さまざまな蛍光性誘導体を10個以上合成し、中間目標を達成した。
(2)各種近赤外蛍光プローブの開発
 6種のpH感受性誘導体を合成し、細胞内酸性オルガネラ測定に適した近赤外レシオ 型pH蛍光プローブの開発に成功した。また、赤色カルシウム蛍光プローブの水溶性向上に向けた構造改良を行い、市販品レベルの蛍光プローブを開発し、3種の生物応用(脳神経細胞の発火時のCa2+変動、エストラジオール刺激ヒト乳癌由来細胞のCa2+振動、ヒスタミン刺激HeLa細胞のCa2+振動)を実施し、中間目標を上回った
(3)その他
 平成28年度に「蛍光消光団を用いた新たなタグペプチドと蛍光プローブのペアの開発」を目的とした新規テーマを、埼玉大学と共同で新たに立ち上げた。
V.評 価
 生体深部のイメージングに使える近赤外蛍光プローブを開発し、生命科学や分析化学等の研究に活用しようとする課題である。開発は順調に進捗し、中間評価時点の数値目標は全て十二分に達成している。さらに一部開発を前倒しして、開発した蛍光分子の市販化につながる研究成果を挙げ、国際特許出願も行っている。
 今後は、製品化戦略を早期に構築し、データの蓄積、ユーザーからのフィードバックによる汎用性・信頼性の向上を図るとともに、実用化に向けた企業との取り組みを積極的に推進すべきである。[S]