資料4

開発課題名「海底土放射能分布測定ロボットの開発 」

放射線計測領域 実用化タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成28年3月

チームリーダー :  小池 敏和【三井造船(株) 船舶・艦艇事業本部 艦船・特機総括部 特機・水中機器部 昭島分室 課長】
サブリーダー :  小田野 直光【海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 研究統括主幹】
中核機関 :  三井造船(株)
参画機関 :  (国研)海上・港湾・航空技術研究所、東京大学、九州工業大学
T.開発の概要
 福島第一原子力発電所事故により海域に放出された放射性物質の空間的な分布状況、放射性物質の経時的な移動の様子を面的に把握し、漁業復興のための適切な対策に資するため、NaI(Tl)シンチレータをベースとした放射線計測システムを装備した遠隔無人機(ROV)を開発する。ROV航走中は計測システムを100m四方の海域で曳航し、海底画像とともに面的な放射能分布を把握するとともに、特異的な場所においては着座して詳細な放射線計測、海底観測、採泥等を可能とする。開発システムは、政府の海域モニタリング、福島県等の地方自治体の詳細な観測、海底工事時の海域の詳細把握等に活用されることが期待される。
U.開発項目
(1)海底土放射能分布測定ロボットの計測機能開発
 今回使用したシンチレータ型放射線検出器は、陸上の設備で評価試験を行い、測定精度10 Bq/kg、空間分解能1 m(放射能濃度1000 Bq/kg)の数値目標をクリアした。また、実海域試験の結果からROVの前進速度0.2 m/sであり、目標を満足する装置開発を達成した。
(2)海底土放射能分布測定ロボットのサンプリング機能の開発
 開発した採泥器は、フィールド試験において約10 cmの採泥に成功した。海底土の硬さに依存するが、ヘドロ状の堆積状態であれば十分採泥できる。また、容量φ20 cm×5 cmのポンプによる吸引型のサンプリング採取装置も開発した。ポンプ式のため砂泥も吸引でき、砂泥やヘドロ状の堆積状態であれば十分採泥できる試験結果となった。
(3)現地実証試験
 平成27年11月、平成28年3月の2回、福島第一原子力発電所沖合2 km圏内で実海域試験を実施した。第1回、2回とも海象状況が悪く、また搭載機器も多く試験すべき機器が多かったため、十分な実証試験を行うことができなかった。
V.評 価
 本課題は、海底における水平及び垂直方向の放射能分布を遠隔無人機(ROV)により正確に測定する機器開発が主要な目的であり、ROVを目的とする位置に正確に操作できる技術と、付帯する放射線計測装置で位置分解能を含めて高精度で放射能測定する技術を開発するものである。放射線計測装置を含めたROVの開発は概ね実行されたと思われるが、各要素技術の評価について、実海域試験での海象状況により十分でなかったのは残念である。一方、実海域試験で局所的に高濃度の堆積物が存在することを見出したことは、大きな成果である。今後は複合的な装置としてのより良い評価及び、基本データを含めて実用に必要なより多くのデータを取得することが必要である。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。