資料4

開発課題名「除染土壌の放射能濃度測定装置」

放射線計測領域 実用化タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成27年9月

チームリーダー :  岡城 康治【(株)北川鉄工所 開発本部 部長】
サブリーダー :  遠藤 暁【広島大学 大学院工学研究院 教授】
中核機関 :  (株)北川鉄工所
参画機関 :  広島大学、日立アロカメディカル(株)
T.開発の概要
 莫大な除染土壌の処理には、減容処理設備が不可欠である。チームリーダーらが平成24年度に福島県田村市に設置した実証プラントにおいてバッチ方式による湿式洗浄分級方式での減容の有効性を確認しており、この成果を生かすため、実際の除染土壌減容処理設備に設置する放射能濃度測定装置を開発する。本装置では、除染土壌について、短時間での正確な放射能濃度測定、安全性確認および履歴管理を行う。測定装置への土壌の投入から排出までを5分以内に実施できる装置の開発を行い、平成27年1月の実用機完成を目標とする。
U.開発項目
(1)除染土壌の正確な放射能濃度測定
 バックグラウンドの影響は、減衰計算では目標の1/10以下を確認出来た。NaI(Tl)シンチレーション検出器におけるγ線スペクトル解析手法の誤差は、シミュレーション計算と福島県内の試験場での試作機運転によって検証を行い、数値目標8 %を達成。測定する土壌の均質性の誤差については数値目標10 %を、またトータルの誤差については数値目標15 %以内をそれぞれ達成した。
(2)洗浄・均質化後の除染土壌の短時間での放射能濃度測定
 5分以内の測定という目標に対し、所期の精度を達成した上で、3分間隔で連続測定できることを確認した。測定の統計精度における数値目標、13 %以内(3000 Bq/kg時)は、2分間のγ線スペクトル測定で13 %以内となることを確認した。
(3)現地試験
 土質の測定への影響における検証については、減容処理された土壌を想定した流動性の良い土壌に加え、減容処理前を想定した粘性土壌も測定できた。さらに2 %程度の含水率変化に追随できること、砂利混じり土壌も測定できることを確認した。均質な試料による検証については検証に用いたGe半導体検出器γ線測定装置と試作機に用いたNaI(Tl)シンチレーション検出器γ線測定装置シンチレータとで同等レベルの正確度で解析できたことを確認した。
V.評 価
 本開発は、放射性Csで汚染された土壌を洗浄し、規制値以下の土壌を再利用するための装置を実用化することを当初の目的としていた。さらに、開発中に現地のニーズから、汚染された土壌の放射能評価の実施も目的に取り込むこととしている。本装置の主構成は、土壌の均質化性を図るミキサーと放射能濃度計測部からなる。放射能濃度計測部は、特別なγ線スペクトルの解析法を導入しているので、その評価を、シミュレーション、抜き取り試験、実試験と種々繰りかえし、測定解析の妥当性と実行時間等を評価している。それらの結果から、現在重大な問題となっている除染土壌の減容化に対して実質的に貢献できる装置になるとともに、汚染土壌の放射能評価も行える装置にもなった。それゆえ、事業化への道筋も見えていることから、今後被災地において本装置が広く利用されることが期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。