資料4

開発課題名「多核対応型クライオコイルMAS-NMRプローブの活用・普及促進」

最先端研究基盤領域 開発成果の活用・普及促進

開発実施期間 平成25年12月〜平成28年3月

チームリーダー :  水野 敬【(株)JEOL RESONANCE 技術部 開発グループ研究員】
連携担当者 :  竹腰 清乃理【京都大学 大学院理学研究科 教授】
清水 禎【物質・材料研究機構 強磁場ステーション ステーション長】
中核機関 :  (株)JEOL RESONANCE
参画機関 :  京都大学、物質・材料研究機構
T.開発の概要
 【装置】本プログラム「実証・実用化タイプ」において開発したクライオコイルMAS-NMRプローブを固体NMRに装備し、開放(共同利用)する。この装置は、多様な核種の測定を行っている固体NMRの利用機関(大学、企業など)が主なユーザーと考えられる。
 【内容】クライオコイルMAS-NMRプローブおよびその周辺技術(高速試料回転システム、簡便な冷却システム)は、そのまま既存のNMR装置に本プローブを導入することで、3〜4倍程度の検出感度向上、1/10以下の測定時間短縮を享受できる優れた汎用性を持っており、周波数を変えることで多様な核種の測定を行うことも可能である。本課題では、さまざまな無機材料のナノ構造解析への応用を中心に、多核対応型のクライオコイルMAS-NMRプローブの活用と普及を促進する。
U.開発項目
(1)共用装置の活用状況
 稼働状況は各機関とも、24時間通電で、1日平均9時間程度であった。平成26年度には複製作プローブ1台を追加して2台体制、平成27年度にはさらにもう1台を追加して3台体制となった。
 内部利用:JEOL RESONANCE: 95時間/京都大学:164日間×9時間/物質・材料研究機構:258日間×9時間。
 外部利用:JEOL RESONANCE: 54時間/京都大学:49日間×9時間/物質・材料研究機構:150日間×9時間。
(2)成果発表
 チームとしての成果発表等件数は、全期間を通じて、学会発表が10件、論文が1件、特許が3件であった。国際学会での発表件数は期間中5件あり、27年度には海外学会の企業展示ブースにおいてモックアップ展示を2回実施した。
(3)その他の成果
 平成28年度初頭に、クライオコイルMASプローブ1式を国内化学メーカーにおけるNMR設備1式の受注契約が成立した。
V.評 価
 本プログラムで開発した検出コイルを冷却して感度向上を図るという方式の装置を、3機関に順次設置し、学会等における報告、展示広報を通じて共同利用をほぼ計画通りに進めた。特筆すべきは、共同利用期間内にユーザーからの強い希望に応え、従来は測定困難とされてきた低γ核種についても、高感度検出が可能なプローブを開発しているところである。また、ユーザーの様々なサンプル仕様に対応、並びに連携担当者からの学術的指導も相まって他に例を見ない固体NMR装置として高い評価を得つつある。残念なのは、先鋭的な装置ゆえ供された試料の一部測定データの公開に制約があった点である。普及を目指す上では、論文等で測定データを公開することが特に重要であることから、今後は広範なユーザー開拓を実施するとともに、積極的な論文発表を確実に実行し固体NMR装置の新たな地位を確立することを期待する。
 本開発では、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。