チームリーダー : |
野島 雅【東京理科大学 総合研究院 講師】 |
サブリーダー : |
堀田 昌直【(同)オフィスタンデム 代表】 |
中核機関 : |
東京理科大学 |
参画機関 : |
(同)オフィスタンデム、(株)アンペール、兵庫県立大学、日本大学
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- T.開発の概要
- これまでにない原理で動作する我が国発の質量分離器を開発する。本要素技術は、小型軽量ながらマスレンジ1〜40,000 AMUまでの質量を選択することができ、マスフィルターとしても質量分析器としても応用が可能である。マスフィルターとしては、クラスターイオンビームの収束特性を損なうことなく、クラスターサイズを選択することができる。これにより、バイオ分子分析時のフラグメントイオン種を自由に操作することが可能になる。また、連続ビームでMS/MSやMSn質量分析が可能となるため、迅速なバイオ分子構造解析が可能となる。
- U.開発項目
- (1)ガスクラスターイオンビーム(GCIB)質量分離の場合のマスレンジ、分解能の検証
- GCIB質量分離性能は、m>160,000 AMU(Ar4000に相当)のマスレンジを確立し、最終目標を上回った。また、GCIB質量分解能は、想定した回転電場電圧(Vp-p=200 V)が印加出来ず、当初目標とした分解能に届かなかったが、従来のTOF方式を凌駕する高分解能スペクトルが得られた。Vp-p=200 Vの電圧下では、最終目標を達成出来るものと予想される。
- (2)マイクロイオンビームでの質量分解能の検証
- 回転電場電源制御系の限界により、当初目標とした質量分解能に届かなかったが、円環パターンの挙動から質量分解能を試算するとm/Δm>1000となることが予想され、原理的には達成可能と考えられる。また、ビーム径は、画像データからFWHM=20 μmとなり、ほぼ最終目標を達成した。
- (3)多元素同時検出、ビームの連続性の確立
- 多元素同時検出は、Ga同位体を用いて検証し、最終目標を達成した。また、2種のプロト機による異なる連続イオンビームによって質量分離が検証され、最終目標を達成した。
- V.評 価
- 本課題は、収束イオンビーム及び長焦点距離イオンビーム光学系を用いて小型・高解像度・高速走査型の新概念に基づく回転電場質量分析計を開発し、MALDI-TOF-MSに代わり生体高分子等の構造解析に適用しようとするものである。
要素技術タイプの課題であるが、連続ビームのまま質量分析可能でTOF方式を凌駕する高分解能が得られるプロトタイプ機を開発し、回転電場方式の優位性を実証した。
ナノテク材料開発ツールとしての応用展開も期待できるので、今後はピークシグナルm/z値の誤差発生等を改善し、特許戦略も考慮して事業化に向けたより一層の取り組みを期待する。
本開発は当初の開発目標をほぼ達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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