資料4

開発課題名「LC-MS対応質量分析イメージング前処理装置の開発」

(平成26年度採択:最先端研究基盤領域 機器開発タイプ)

チームリーダー :  澤田 誠【名古屋大学 環境医学研究所 教授】
サブリーダー :  幸村 裕治【(株)ルシール 代表取締役】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  (株)ルシール
T.開発の概要
 本開発では、座標再現機能を搭載したホットメルト−レーザーマイクロダイセクション技術を用いて試料作製することにより、これまで不可能であったLC−MSによる質量分析イメージングを実現する前処理装置を開発する。また、同技術を応用してMALDI−MSによる質量分析イメージングでの1 μmの空間分解能を達成する。これにより従来技術に比べて、より多様な分子の生体内分布を、より高い空間分解能で解析できるようになり、さまざまな生命科学分野での活用と普及が期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)LC-MS用装置の開発
 250×250 μmスポットでの薬剤分析において、S/N > 5 の目標数値を大幅に上回るS/N = 19.2 を達成し、生体物質(ATP、リン脂質、ペプチド等)の検出においてはアセチルコリンの測定で目標値(S/N > 5)を上回るS/N = 32を達成した。リキッドハンドリング性能に関しても、5,10 μlの20 %アセトニトリルの分注、回収を達成し、マルチリアクション動作としては、目標の分注と回収の2ステップ動作のみでなく、ノズル洗浄、乾燥など多種類の動作を実現した。
(2)MALDI-TOF用装置の開発
 開発中のフィルムではあるが、2,500スポット回収を達成した。切片の回収率100 %、切片ごとの組織量の回収率は85 %を達成し、目標値を上回った。同時多物質検出については、51種類のシグナルペプチドがアルツハイマー病で変化している可能性を示し、目標値を大幅に上回った。
(3)質量分析イメージング用ソフトウエアの開発
 解析機能、3D表示機能は完成し、基本動作を確認した。
V.評 価
 本課題は、LC-MSをはじめとする多様な分析装置と組み合わせて、生体中の様々な分子に対するイメージング装置群(=分析顕微鏡群)を構築するための汎用試料前処理装置を開発するものである。また、同技術を応用してMALDI−MSによる質量分析イメージングでの空間分解能向上も目的としている。本チームは先行する要素技術タイプにおいて、高分子量生体高分子の3Dイメージングが可能な試料前処理装置を開発し、大きな成果を上げている。また、多様な物性を持つフィルムを開発することで、種々の分子のSN比を大きく上げることができることも示した。本機器開発タイプではこれらの成果を受け、熱溶融フィルムを用いるレーザーダイセクション法の物理化学機構も明らかにされつつあり、開発は順調に進捗している。この方法の定量性の改善も期待できる。なお、分解能の向上や、複雑な前処理・分析処理を行うのに要する時間の短縮の工夫が必要である。MSの付属品とするか、前処理装置として独立させるかの製品の位置づけに留意しつつ、開発を着実に推進すべきである[A]。