資料4

開発課題名「高速1ショット観測を実現するフォトカソード電子源の開発」

(平成26年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  西谷 智博【名古屋大学 シンクロトロン光研究センター 特任講師】
サブリーダー :  北村 真一【日本電子(株) 開発基盤技術センター 副センター長】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  日本電子(株)、東京理科大学、青山学院大学
T.開発の概要
 1 ミリ秒以下のシングルショットを用いた電子顕微鏡画像の撮影が可能で、電子線の平行性、可干渉性が既存の熱電界放出型電子銃と同等以上の性能を持つ半導体フォトカソード電子銃を開発する。本開発により、電子顕微鏡の時間分解能の飛躍的向上やクライオ電子顕微鏡法のスループットと分解能向上、水溶液中、気体雰囲気チャンバー中の分子の高時間分解能動態観察などへの波及が見込まれ、電子顕微鏡法に革新をもたらすことが期待できる。
U.中間評価における評価項目
(1)フォトカソード用半導体作成技術の確立
 InGaN半導体で量子効率10 %、暗寿命36 時間、GaN半導体で量子効率5 %、暗寿命96 時間の半導体を作製し、両半導体とも300時間以上劣化のない高耐久性を実現した。また、AlGaAs半導体は設備上の問題で量子効率、暗寿命評価を実施出来ていないが、p 型ドーピングした結果 2x1018 cm-3のキャリア密度を実現した。一部を除いて、中間目標を上回った。
(2)パルスレーザー照射技術の確立
 連続光から10 kHzまで調整可能なパルス駆動、最小パルス幅2 μs、カソード面でのパワー密度8.3x10-1 W/cm2を達成した。また、フォトカソード半導体へ照射する電子励起光学系を構築し、中間目標を達成した。
(3)その他
 InGaN半導体から1 ms(最終目標)のパルス幅のパルス電子ビームを生成した。
V.評 価
 電子顕微鏡に搭載する高線量パルスレーザーの利用が可能な半導体フォトカソード素子と、それを用いた高い平行性と干渉性の電子ビームを発生するコンパクト電子銃を開発する、という課題である。AlGaAs半導体の作製は 設備上のトラブルのため未達であるが、その他の要素技術の開発は極めて順調に進捗しており、中間目標を上回る成果が得られた。生成したパルス電子ビームのパルス幅、電荷量は、最終目標を超える値を示した。また、要素技術の開発に所定の目処が立ったため、半導体素子・装置の事業化開発を目的としたベンチャー企業を本年7月に設立している。
 今後は、チーム内、関係機関とさらなる連携を図り、最終目標である半導体フォトカソードを実装した新たな電子顕微鏡の開発を加速することが強く望まれる。引き続き、開発を着実に推進すべきである[A]。