資料4

開発課題名「暗視野X線タイコグラフィ法の開発」

(平成26年度採択:最先端研究基盤領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  高橋 幸生【大阪大学 大学院工学研究科 准教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 X線タイコグラフィは、高い空間分解能を有するX線位相イメージング法であり、さまざまなバイオイメージング・構造物性研究への応用が期待されている。本研究開発では、目的の空間分解能・感度を達成するために必要な回折強度のダイナミックレンジを大幅に圧縮する新手法「暗視野X線タイコグラフィ法」を開発し、世界最高の空間分解能・感度を有するX線タイコグラフィを実証する。
U.中間評価における評価項目
(1)円柱パターン素子の設計・作製技術の確立
・計算機シミュレーション:円柱パターン素子の直径、高さを系統的に変化させ、暗視野X線タイコグラフィの計算機シミュレーションを行い、円柱パターン素子の最適化を行った。
・円柱パターン素子の形状精度・表面粗さ:集束イオンビーム加工により数値目標を達成した所望サイズの凹型パターン素子を作製する技術を確立するとともに、電子線リソグラフィ技術により所望サイズの凸型パターン素子を形成する技術を確立した。円柱パターン素子に放射光X線を照射し、観測された同心円パターンのフリンジのビジビリティより、表面粗さについても目標値を達成していることを確認した。
(2)暗視野X線タイコグラフィ測定系の構築
・プロトタイプ装置の完成:既存の全反射集光鏡を活用することによってプロトタイプ装置を完成させた。さらに、計画を前倒しし、暗視野X線タイコグラフィ専用の光学架台、X線集光用の多軸調整機構、試料チャンバー、試料ステージの開発を行った。
・基本性能:位相検出感度については、30 nm厚さのタンタルテストパターンを前記作製した円柱パターン素子を用いて測定し、回折パターンに位相回復計算により得られた再構成位相像のヒストグラムから感度の定量評価を行った結果、目標とした位相感度を達成している。2次元分解能についても、同じく30 nm厚さのタンタルテストパターンの測定を行い、目標値を達成している。
V.評 価
 本開発はnmオーダーの空間分解能で位相感度0.001 ラジアンにてX線イメージングを試みる意欲的な挑戦である。強力なコヒーレントに近いX線源(放射光)が必要であり、大型放射光施設が必須となっている。開発のポイントは高精細な円柱パターン素子の作製と高感度なX線検出器が得られるかである。前者は自作技術の確立、並びにメーカーの協力が得られている。目標としている回折像は得られており、今後、装置の完成度を向上させ、応用分野に展開させることを期待したい。開発は順調に進捗し、中間評価時点の数値目標を全ての項目で達成し、一部の開発を前倒しで実施している。今後、高感度なX線検出器を導入することによって開発を積極的に進めるべきである[S]。