資料4

開発課題名「集水域に着目した放射線の自然浄化モニタリングシステムの開発」

放射線計測領域 革新技術タイプ(要素技術型)

開発実施期間 平成24年10月〜平成27年3月

チームリーダー :  兼松 泰男【大阪大学 産学連携本部 教授】
サブリーダー :  藤宮 仁【(株)ダイナコム 代表取締役】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)ダイナコム、福島大学
T.開発の概要
 福島県において、放射性物質の自然浄化作用(自然崩壊、森林の枝葉の脱落、腐敗と雨による河川への流出、移動)を調査しておくことは今後の放射線量率の変化を把握するために重要である。本課題では、集水域の川底放射線量を計測するため、橋梁から垂下して利用するタイプのセシウムカウンターを開発し、阿武隈川流域の橋梁30箇所以上で継続的に測定を行う。これにより、自然浄化作用のモニタリングを行い、長期的な放射線濃度の推移を明らかにできるモニタリングシステムを構築することを目指す。
U.開発項目
(1)集水域モデル構築
 集水域の算定2種類以上のレベルで算出し、地図情報システム上での3種表示(集水域毎に放射線量、減衰量、異常値の切り替え表示)を可能とした。また4段階の集水域を求め、それぞれのシミュレーション結果について地図システム上に表示できるようにし、放射線量、減衰量などを算出して、表示できるようにした。
(2)モニタリングシステムソフトウェア
 モニタリングシステムソフトウェア 集水域モデル赤池情報量AICwcとメッシュモデル赤池情報量AICmsでの有意性比較において(AICms - AICwc)>0が示され、GPGPUを利用することで高速にシミュレーションを行うためのプログラムを作成でき、集水域モデルが優位であることが解明された。また、土壌中拡散モデルを使用することで長期自然浄化推定について対象集水域毎に5年、10年後の空間放射線量率を推定することができた。
(3)成果の公開
 測定されたデータは、サーバー上にアップすることで、自動的にKMLファイルに変換され、Google Mapに重ねて閲覧することができる。また、シミュレーションによって得られた予測値については、その結果をKMLファイル化してサーバーにアップすることで、WEBブラウザから閲覧することが可能である。
V.評 価
 本開発は、環境中の放射線量率がどのように変化していくかを予測・推定できるモニタリングシステムを構築することである。集水域モデルの構築については、地図情報システムや航空写真情報とを組み合わせるとともに、航空機による放射線量率モニタリングの結果を組み入れ、環境中での137Csの動態を調査した。この調査においては対象地区を限定し、詳細に検討がなされ、137Csの地表表面及び深さ方向の拡散係数の変化という複雑な複数の要因を単純な指標で集水域ごとの特徴を把握できることは、本開発における目覚ましい成果と思われる。しかし、当初計画していた垂下型計測機器による計測を含むシステム開発と、実際に開発されたシステムや可搬型のモニタリングシステムによる測定との間に隔たりがあることは否めない。また成果の利用は対象地区に限定されることなく、福島県全体にわたり活用されることが望まれるがその見通しが十分ではない。今後の除染や環境回復にどのように活用されるかについて見通しが弱く、目標値が未達となり、本事業の趣旨に相応しい成果は得られなかったと評価する[B]。