資料4

開発課題名「3次元電子顕微鏡のための画像処理プラットフォームの開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) ソフトウェア開発タイプ

開発実施期間 平成23年10月〜平成27年3月

チームリーダー :  安永 卓生 【九州工業大学 情報工学研究院 教授】
サブリーダー :  大野 国弘 【(株)なうデータ研究所 代表取締役】
中核機関 :  九州工業大学
参画機関 :  なうデータ研究所
T.開発の概要
 3次元電子顕微鏡法のための画像処理プラットフォームを構築し実装する。近年、電子線トモグラフィー法などの3次元電子顕微鏡制御ソフトウェアにとって、画像処理技術が必須の技術となっている。そこで、個々の電子顕微鏡制御ソフトウェアから、本プラットフォームで提供する画像処理API(Application Programming Interface)、およびネットワーク越しの画像処理依頼を実施可能とし、制御ソフトウェアの共通化を行う。
U.開発項目
(1)画像処理プラットフォームの開発

・電子顕微鏡に必要なAPIの選択と標準化のための仕様の決定と実装については、電子顕微鏡画像処理に必要なAPIとして、100を越える低水準APIを新たに実装し、かつ、50以上の高水準APIを実装できている。全体として、API数は、1000を越え、それらの9割以上のAPIに関してドキュメントを作成し、ドキュメント及びソースコードを全てネット上に公開している。

・APIの高速・並列処理への対応と実装については、マルチスレッド及びGPGPUの変化に対応出来るようにAPI(eosThread, eosCUDA)を作成し、それを用いて、処理時間の長いプロセスを選択して、3次元再構成、2次元投影像の作成、相互相関法、クラスター解析法に関連するAPIをマルチスレッド化し、コア数にほぼ比例した性能向上をもたらしている。

・ネットワーク透過的なプロトコルの策定と実装につては、PIONE・プラットフォームとして、ネットワーク越しにデータの転送、プロセス処理の転送を行うプラットフォームを策定し、プロトコルを文書として公開している。現在、GITHUB上からダウンロード・インストールすることで、それぞれの環境で利用できるようにした。

(2)画像処理プラットフォームに則ったアプリケーションの提示

・汎用画像処理アプリケーションへの対応に関しては、それぞれのAPIを自動的に各種言語に対応出来る変換のプラットフォームを作成している。

・低電子線量撮影法のプロトタイプはVEM(仮想電子顕微鏡)として開発し、学会にて発表と報告を行っている。

・ランダムコニカル傾斜法のアプリケーションを作成した。アプリケーションサービスについては、現在準備中である。

V.評 価
 本課題は、3次元電子顕微鏡法に必要となる画像処理を行うためのソフトウェア群を搭載したプラットフォームの開発であり、開発目標は十分達成したといえる。
 ドキュメント整備、チュートリアル資料の作成、顕微鏡学会分科会等との連携、電子顕微鏡画像処理に関わるチュートリアル・ワークショップの開催(4回)など、開発した成果の活用についても積極的に進めており、その結果、企業(ユーザー企業2社)と本研究開発ソフトウェアを用いた共同研究・分析を開始している。
 今後、顕微鏡学会、顕微鏡メーカとの連携を密にし、開発したプラットフォームを搭載した装置開発の実現に努め、国産プラットフォームとしての利活用推進に努めていただきたい。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。