資料4

開発課題名「ベクトル磁場検出・高分解能・近接場磁気力顕微鏡の開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 機器開発タイプ

開発実施期間 平成23年10月〜平成27年3月

チームリーダー :  齊藤 準【秋田大学 大学院工学資源学研究科 教授】
サブリーダー :  蓮村 聡【(株)日立ハイテクサイエンス 分析技術部技術二グループ】
中核機関 :  秋田大学
参画機関 :  (株)日立ハイテクサイエンス、日東光器株式会社、秋田県産業技術センター
T.開発の概要
 本プログラム「要素技術タイプ」で得られた成果をもとに、探針試料間の交番磁気力により誘起される探針振動の周波数変調現象を利用して、従来困難であった試料表面近傍での磁場計測を実現し、世界最高の空間分解能5 nm以下を得ることを目指す。また、これまで難しかった磁場のベクトル計測を、周波数復調時の位相情報処理により実現し、同時に試料磁極の極性の直接検出を行う。本顕微鏡により、電気自動車用永久磁石材料、高密度磁気情報デバイス・材料などの研究開発が加速されることが期待される。
U.開発項目
(1)ハード磁性探針(交流磁場計測用)
 FePt-MgO系グラニュラー合金を用いて先鋭性に優れ保磁力の高い探針を開発し、計測可能磁場として最大 20 kOeを達成した。また、磁気記録ヘッドの観察において5 nmの空間分解能が再現性よく得られた。
(2)ソフト磁性探針(直流磁場計測用)
 Fe-Co-B系非晶質合金を用いて先鋭性とソフト磁性(低飽和磁場・低保磁力)に優れた探針を開発し、磁気記録媒体の観察において5 nmの空間分解能が再現性よく得られた。
(3)常磁性探針(高強度・直流磁場計測用)
 非磁性マトリックス中にFe-Co粒子が分散したグラニュラー合金薄膜を用いて磁気飽和がなく高磁化率を有する超常磁性探針を開発し、計測可能磁場として20 kOe 以上を達成すると共に永久磁石観察において明瞭な磁場像を得た。
(4)交流磁場印加機構
 直流磁場計測の際に用いる交流磁場印加機構については、試料厚み 1 mmにおいて、6 kOe以上、試料厚み3 mmにおいて3 kOe以上という目標を達成した。
(5)計測システム
 上記の各種探針および磁場印加機構を含む近接場磁気力顕微鏡システムを構築し、交流磁場および直流磁場観察において当初の目標性能を達成した。
V.評 価
 本課題は、交番磁気力が探針振動に誘起する周波数変調現象を利用することによって、試料表面近傍での高分解能磁場検出を可能にする磁気力顕微鏡の開発を目的としている。三種類の探針の性能、交流磁場印加機構の性能、磁気力顕微鏡装置の交流及び直流磁場計測での基本性能など、最終目標の全項目において当初目標値を達成した。さらに、測定評価手法の開発や測定時間短縮など実用上重要と考えられる点についても、大きな進展が見られた。今後は、本プロトタイプ機のユーザー開拓を積極的に進めるとともに、ユーザーニーズを踏まえた機器高度化と現場での実証試験へ向けた努力に期待したい。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。