資料4

開発課題名「CFRPを用いた超軽量精密光学素子の開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成27年3月

チームリーダー :  國枝 秀世【名古屋大学 大学院理学研究科 教授】
サブリーダー :  浜田 高嘉【玉川エンジニアリング(株) 技術部 部長】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  玉川エンジニアリング(株)、愛媛大学
T.開発の概要
 高精度の大型X線望遠鏡は宇宙科学を推進するために必須であるが、その要素技術はいまだに開発途上にある。本開発では、軽量で強度・形状安定性に優れた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に着目し、超軽量高精度反射鏡に必要な、精密成形技術確立を目指す。本開発により、医療応用可能なX線素子も視野に、波長を問わず大型望遠鏡製作や、安価で高性能の反射鏡を量産することも可能となる。また、CFRP上での皮膜形成は精密金型製作にも応用が期待される。
U.開発項目
(1)反射面形成技術の開発
 CFRP成形後、金属被膜を形成し、X線散乱法による表面粗さ測定で0.34 nmに達した。2段1体型ガラスマンドレルによる検討はほぼ数値目標に達したが、GCM法による検討はσrms=3.24 μmと使用可能なレベルであるが、最終目標には達しなかった。
(2)円筒CFRP 反射鏡の製作と評価
 Φ200の2段1体型CFRP基板を作製し、形状精度 σrms 1 μm以下(母線方向)を達成した。また、経時変化を検討し、表面粗さは220日変化なし、吸湿率は吸湿対策後40日変化ないことを確認した。結像性能は20秒角弱(HPW)を実現したが、最終目標には達しなかった。
(3)実用化に向けた検討
 設計に基づき試作品を1台製作し、SPring-8にて評価を実施した。実用化に向けた課題も抽出でき、最終目標を達成した。
V.評 価
 機械的性質の優れた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に着目し、人工衛星搭載用X線望遠鏡用の円筒集光ミラーの軽量化を目的とした開発である。開発は、一部課題が残るものの概ね順調に進捗した。
 機械強度を改善したCFRPミラーを作製し、また、レプリカ法による精密薄板CFRP反射鏡の効率的な製作技術を確立した。全ての最終目標は達成できなかったが、光赤外線からX線までの波長域で使用可能な軽量光学素子を実現しつつある。
 今後は、ノウハウを蓄積しつつ効果的に開発を推進し、残る課題を早急に解決することを期待する。本開発は当初の開発目標をほぼ達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。