資料4

開発課題名「電池用-高分解能電流経路映像化システムの開発」

(平成25年度採択:グリーンイノベーション領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  木村 建次郎【神戸大学 大学院理学研究科 准教授】
サブリーダー :  木村 憲明【Integral Geometry Instruments(同) 最高経営責任者】
中核機関 :  神戸大学 大学院理学研究科
参画機関 :  Integral Geometry Instruments(同)、千葉工業大学
T.開発の概要
 環境問題が深刻化する中で、次世代リチウム二次電池の高性能化が注目されている。本開発では、電池内部の電流経路を超高分解能で映像化するシステムを開発、リチウム二次電池の負極でのデンドライト発生をパッケージ越しに非破壊画像診断し、性能劣化の少ない負極材料開発の促進、正極負極短絡に係る爆破事故を未然に防ぐことを目的とする。
U.中間評価における評価項目
(1)積分幾何学的再構成ソフトウェアの開発
 世界初となる積分幾何学的画像再構成法の計算アルゴリズム、及び、測定時間の短時間化が可能な再構成計算アルゴリズムを構築し、GUIを備えた映像化ソフトウェアを開発した。測定対象物表面上で磁気センサを回転走査させ、積分幾何学を用いた数学的な再構成法により、薄膜の最小寸法まで空間分解能を高めることが可能なソフトウェアの開発に成功した。基板上の配線モデルが発生する磁場をTMR薄膜デバイス(磁気検出部の厚さ:20 nm、幅:2 μm×2 μm)で2次元走査して測定し、シミュレーションにより算出すると、再構成画像を1秒以内(再構成画像 128ピクセル×128ピクセルの場合)で得て、かつ薄膜デバイスの最小寸法に相当する空間分解能(20 nm)が確認された。
(2)体面積位置決め用XYZθステージの開発
 実用蓄電池用の高速動作-電流経路映像化システムの開発を加速させて、実用化の目途が立った。試作1号機を平成26年度中に完成する予定である。磁気センサを52chから最大128chに一次元配列させた結果、磁気センサが1chの従来機と比較して、蓄電池内部の電流経路を2秒以内で測定出来るようになり、充放電過程の電池内電流経路の画像化を高速(52倍から128倍)に行うことができた。
V.評 価
 本課題は電流の流れに伴い現れる磁場を検出して、実用的なリチウムイオン二次電池内部の充放電時の電極電流分布を非破壊で観察する画期的な装置の開発である。位置決め精度2 μmで、電流経路を2秒以内で計算して二次元映像化可能な装置を開発し、中間目標以上の成果を上げており、大いに評価したい。今後は本開発装置の価値を一層高めるために、実用型多層電池の深さ方向の位置決め精度を上げ、さらには電極面内の微小な電流密度分布を測定可能にすれば、解析が難しいと言われている電池構造設計、電極材料、経時劣化等の要因解明に繋がる有力な手段となり、リチウムイオン二次電池の品質・性能、及び、製造・生産技術を飛躍的に高める可能性が出てくるものと期待される。ただし、本開発で検討されている二次電池の等価回路モデル化は本計測装置の開発にどのように反映させるのか疑問が残り、むしろ本課題を早期に実用化させるために、多機能な製品にせず、ニーズの高い単一機能の装置に仕上げるように開発を着実に推進すべきである。[A]