資料4

開発課題名「生体防御系を利用した疾患診断の基盤技術開発」

(平成25年度採択:ライフイノベーション領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  五島 直樹【産業技術総合研究所 創薬分子プロファイリング研究センター チーム長】
サブリーダー :  尾澤 哲【(株)セルフリーサイエンス 代表取締役社長】
中核機関 :  産業技術総合研究所
参画機関 :  (株)セルフリーサイエンス、北里大学、千葉大学、国立遺伝学研究所、(株)ダイナコム
T.開発の概要
 独自のプロテインアレイ技術をベースとし、低コストかつ網羅的に自己抗体測定を可能とするプロテインアレイシステムの開発を行い、生体防御系としての抗体を利用した総合的疾患診断システムの構築を行う。また、本システムを使用して、今後の自己抗体による診断システムの基礎となる健常人の自己抗体データおよびHLA データを取得し、疾患と自己抗体の関連解析を行うための基盤データを構築する。本システムと基盤データをもとに総合的診断、早期診断、免疫治療の評価が可能になると期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)高密度プロテインアレイの開発
 SBS規格プレートのGSH修飾-aC基板に約6144タンパク質/SBS規格プレートの密度でスポットが可能なピン仕様を決定し、更にピンの垂直方向の速度、ピンとタンパク質溶液のコンタクト時間などの最適化検討を行った。その結果、目標値である1536ピンヘッド4回シフトを達成した。がん患者血清中の抗p53抗体の検出と免疫性神経疾患患者血清中のYo抗体の検出を血清アレイおよび抗原アレイで行い、各アレイの性能チェックを行った。その結果、血清アレイでは抗p53抗体に関しては、ELISA陽性の16サンプル中16サンプルでp53抗体陽性スポットを検出した。また、抗原アレイによるYo抗体の検出に関しては、ELISAで陽性9サンプル、陰性3サンプルに対して、抗原アレイによって陽性7サンプル、陰性3サンプルの解析結果を得た。
(2)自己抗体プロファイリングのデータ取得、解析
 炎症性腸疾患、健常者、既知自己抗体測定血清(Yo抗体、抗p53抗体。ネガティブコントロール)の合計100サンプルの自己抗体の検出を行った。蛍光タンパク質Venusを1536ピンヘッドによるアレイ作製プロトコールに従ってスポット測定を行い、蛍光値の測定によってCV値が10%となり、当初目標を達成した。
(3)高密度プロテインアレイのタンパク質合成
 コムギ無細胞合成試薬を用いて、当初目標である16,000種以上のヒト完全長cDNAクローンを超ハイスループットにタンパク質合成を行うことに成功した。
V.評 価
 網羅的に自己抗体測定を可能とするプロテインアレイシステムの開発を行い、生体防御系としての抗体を利用した総合的疾患診断システムの構築を行うための要素技術開発である。各要素技術の開発は着実に進捗している。しかし、既に競合製品が市販されていることから、今後は、これまでの優位性(搭載タンパク質の多さに基づく疾患診断の適用範囲が広いこと)に加え、感度、精度、特異性及び再現性での優位性を一層追求するとともにプロトタイプの早期開発と質の高い診療機関との連携を念頭に、早期の実用化に向けた開発を着実に推進すべきである。[A]