資料4

開発課題名「紙基板インクジェットプリントヘルスケアチップ(I-PADs)の開発」

(平成25年度採択:ライフイノベーション領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  チッテリオ ダニエル【慶應義塾大学 理工学部応用化学科 教授】
サブリーダー :  山崎 浩樹【(株)テクノメディカ 方式開発部 部長】
中核機関 :  慶應義塾大学
参画機関 :  (株)テクノメディカ
T.開発の概要
 グローバルユースの安価なヘルスケア用の紙基板流路デバイス(PADs)の開発により、精密機器や臨床検査室を必要とする現行の医療検査に比べて、簡便・迅速・低コストでの診断が可能となる。PADsは、世界人口の80 %にのぼる発展途上国での健診に使用可能であり、また先進国における健康維持のための在宅スクリーニング検査にも寄与することから、世界的な医療費の削減とライフイノベーションへの貢献が期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)インクジェットプリント技術を用いたマイクロ流路のパターニング方法の開発
 流路作製条件の最適化を行った結果、9.5 ?Cで冷却しながら表面・裏面ともに10分間UV光を照射し続けることで、一度に72個の流路を作製することに成功した。冷却導入により、照射するUV光の強度は以前の300 mW/m2から4 mW/m2と大幅に低減することができた。それに伴い、一度に照射できる面積も1 x 2 cm2から10 x 10 cm2に拡張することに成功し、流路1つあたりの作製時間は3分から22秒に短縮できた。
(2)インクジェットプリンタで印刷可能な目的物検出用化学・バイオセンシングインクの開発
 コアシェル型ポリマー粒子を重合し、粒径170 nm(目標200 nm以下)の単分散粒子を合成した。これら粒子に指示薬を固定し、pH調節剤を併用することで、試料を滴下するだけで鉄、銅及び亜鉛を検出できるPADsの開発に成功した。これと平行して、蛍光検出用及び非色検出用インクを開発し、それぞれヒト涙液中ラクトフェリン及び尿中アルブミン、クレアチニンを定量的に検出することに成功した。また、紙基板ラテラルフローイムノアッセイ用新規発光ラベル化剤を開発し、市販のイムノアッセイキットに匹敵あるいは凌駕する検出感度を達成した。さらに、抽出と検出を同時に行うメソポーラスシリカ粒子状インクを開発し、水溶液中のビタミンEに対する応答を得ることに成功した。最後の中間目標として設定したイオンセンサー膜作製用ポリマーインク及びイオン選択性電極用イオンを作成した結果、目標検出感度でのナトリウム及びカリウムイオンの検出にも成功した。
V.評 価
 感度のよい簡易半定量分析法を構築するため、コアシェル型ビーズやメソポーラスビーズ等を巧妙に用いて、インクジェットプリント技術による紙基板流路デバイスの開発を目指している。開発は順調に進捗し、当初目標以上の感度を達成している。しかし、実用化のためには検出・判定が確実にできる必要があり、今後は、紙基板流路デバイスの保存性、安定性、再現性、環境依存性の検討を含め、多数のサンプルを用いた実証検証が必要と考えられる。医療の立ち遅れた地域への貢献が期待される技術を開発するという当初の最終目標へ向けて、開発を着実に推進すべきである。[A]