資料4

開発課題名「KTN光偏向器を用いたEnface-OCTシステムの開発」

(平成25年度採択:ライフイノベーション領域 要素技術タイプ)

チームリーダー :  近江 雅人【大阪大学 医学系研究科保健学専攻 教授】
サブリーダー :  小林 潤也【日本電信電話(株) NTTフォトニクス研究所 主幹研究員 グループリーダー】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  日本電信電話(株)、東京医科歯科大学
T.開発の概要
 タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)光偏向器による新たな高速Enface-OCT装置を試作し、発汗異常症診断への有用性を明らかにすることを目指す。本装置はタイムドメイン(TD)OCT方式であり、従来法と比較して100倍以上の飛躍的な速度向上が可能なため、Swept source(SS)-OCTに匹敵するイメージ取得速度が期待できる。さらに、OCT立体イメージを高速に取得し、これまでOCTの古典的な方式となっているTD-OCTのブレークスルー技術の確立を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)KTN光プローブの開発
 KTN結晶の構造、高反射膜形状を最適化することで、ビーム偏向周波数100 kHzという目標値に対し2倍高速な動作を達成した。光偏向器の解像点数も目標値の2.5倍の250点を達成した。また、5パスのKTNビーム偏向器を新たに開発し、目標値のビーム振れ角200 mradを達成した。
(2)KTN光偏向器によるEnface-OCTの開発
 1軸KTN光偏向器によるEnface OCTシステムを開発し、測定範囲3.5×1.5 mm2、測定深度1.6 mm、Enface像取得時間2.5 ms、フレームレート400 fps、3D像取得時間0.5 s及び3Dデータ取得率50 M voxels/sを達成することに成功した。フレームレート 400 fps(2.5 ms)、3D像の取得時間 0.5 s(2 volume/s)、3Dデータ取得率 50 M(voxels / s)はTD-OCT方式としては従来の100倍以上の速度であり、SS-OCTに匹敵する世界最高速のTD-OCT方式のEnface-OCTである。OCTシステムを用いて、ヒト指先エクリン汗腺の三次元データを取得し、汗腺の体積を精密測定することに成功した。また、多汗症患者と健常者のOCTを比較した結果、多汗症患者が有意に汗腺の幅が太い傾向がみられ、汗管の形態の違いが確認できた。これらの成果はOCTを用いて初めて得られた結果であり、有用な臨床データである。
V.評 価
 タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)光偏向器を用いた高速Enface-OCT装置を試作し、発汗異常症診断への有用性を明らかにすることを目指す要素技術開発である。KTN光プローブの開発は当初の目標を達成している。Enface-OCTの開発に関しても、深度にやや不安が残るものの、目標達成できる見通しがあり、ほぼ順調に進展している。今後は、機器の使いやすさなどに決定的に影響を及ぼすソフトウェアの開発等にも力を注いで、早期の実用化に向けた開発を着実に推進すべきである。[A]