チームリーダー : |
波多 聡【九州大学 大学院総合理工学研究院 准教授】 |
サブリーダー : |
古河 弘光【(株)システムインフロンティア 取締役副社長】 |
中核機関 : |
九州大学 大学院総合理工学研究院 |
参画機関 : |
(株)システムインフロンティア、筑波大学、東北大学 |
- T.開発の概要
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透過電子顕微鏡で動的な自然物理現象を、その場3次元観察するシステムを開発する。連続傾斜像を撮影しながら3次元画像を再構成するソフトウェア、及び試料のその場試験が可能なトモグラフィーホルダーを開発し、これらソフトウェアとハードウェアの融合により、ナノスケール変形挙動のリアルタイム3次元観察の実現を目指す。エネルギー問題や元素戦略で注目を集める先端材料、及び生命科学の研究開発現場への波及が期待される。
- U.中間評価における評価項目
- (1)その場変形トモグラフィー試料ホルダーの開発
- 試料を変形もなく装着でき、10-4/sec〜10-6/secのひずみ速度範囲で可変な引張・圧縮試験が可能であり、かつ、±60°以上の高角度試料傾斜が可能なその場変形トモグラフィー試料ホルダーのプロトタイプ開発に成功し、目標を達成した。現時点では、FEI製の電子顕微鏡ホルダーに対応しているが、最終的には日本電子製にも適用する予定。
- (2)動的連続傾斜像撮影ソフトウェアの開発
- 毎秒2°の等速度で連続的に試料傾斜を行うと同時に、その様子を動画として記録するプロトタイプのソフトウェアを完成し、その機能(1フレーム撮像時間0.04sec)を確認した。実際には2°/secで試料傾斜しながら2°傾斜毎に撮影する場合、連続傾斜像の撮影間隔は1 secかかり、この条件で±60°の傾斜範囲を撮影すると、総撮影時間は1 sec×60枚=60 secとなる。中間評価時の数値目標(連続傾斜像収録時の最小平均撮影間隔:10 sec)は達成している。ただし、現時点では傾斜制御と記録部を統合したGUIや試料位置の予測制御といった機能が組み込まれておらず、最終的にはその機能を加えて完成する予定である。
- (3)圧縮センシングアルゴリズムの開発
- Total Variation(TV)正則化を用いたRow-Action型3次元画像再構成法により、試料傾斜角度欠損や投影方向数が少ないことに起因するアーティファクトを大幅に削減でき、連続傾斜像枚数を1/10に削減しても高分解能な3次元画像が得られる圧縮センシングアルゴリズムのプロトタイプを作成し、当初の目標を達成した。
- V.評 価
- 試料を引張・圧縮変形できる独自の電子顕微鏡用試料ホルダー、及び、その変形画像データを短時間で蓄積できるソフトウェアの開発が当初の計画通り進んでいる。とくに本課題の要である圧縮センシング画像再構成処理ソフトウェアが予定よりも短期間で開発され、プレス発表とともに無料配布が開始されたことは評価できる。それによって早期に幅広く新しい用途への応用、例えば生体等試料劣化が著しく、短時間の計測が求められるような現場等、本アルゴリズムを活かせる用途開発を強く期待する。本課題は成果の普及が極めて重要であるので、今後もユーザーの視点に立ちながら開発を進め、積極的に市場へのアプローチを試みると同時に、知財権も確保しながら開発を着実に推進すべきである[A]。
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