資料4

開発課題名「細胞内化学反応解析のための超高速光計測システムの開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ)

チームリーダー :  平岡 泰【大阪大学 大学院先端生命科学研究科 教授】
サブリーダー :  岡田 公太郎【(株)知能情報システム 開発部】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)知能情報システム
T.開発の概要
 生きている細胞内で蛍光強度変動を高速で計測するために、超伝導単一光子検出器(SSPD)と高速相関器を蛍光相関顕微鏡に実装し、超高速光計測システムを開発する。可視波長域で感度の高いSSPDおよびSSPDの出力速度に対応できる1ナノ秒程度の時間分解能を持つ高速相関器を実現することにより、蛍光寿命変化の検出を可能とし、これによりタンパク質や核酸の分子動態や生化学反応の計測を可能とする。
U.中間評価における評価項目
(1)SSPDの可視光高感度化
 シングルピクセルのSSPDについて、設計最適化により、素子面積直径35μmを作製でき、550 nmでの検出感度44%、動作速度35 MHzと目標値を達成した。
(2)高速相関技術の確立
 入力ゲート時間は動作が不安定であるものの10 nsecを達成し、相関時間のダイナミックレンジは、SSPD出力の100 MHz〜100 Hzをカバーする10 nsec〜10 msecを達成した。
(3)蛍光相関(FCS)顕微鏡への実装
 SSPDと相関器を顕微鏡へ実装して溶液中でのFCS計測を実施し、最速相関時間の目標値100 nsecに対し、20 nsecを達成した。
(4)細胞における超高速光計測の実証
 生細胞を用いたFCS計測を実証でき、溶液中と同様に最速相関時間の目標値100 nsecに対し、20 nsecを達成した。
V.評 価
 細胞内生体分子動態の測定に使用されているFCSのフォトン検出器としてSSPDを用いる装置の開発である。従来の検出器APDでは、アフターパルス発生により100ns以下の領域が隠れていたが、これが見えるようになる(5 nsまで)と期待される。回転拡散や高速反応が検出できるようになるので需要は大きいだろう。
 SSPD開発の先導者と、FCS開発の先導者グループのメンバーと、細胞内反応の生物医学ユーザーとからなるチームで、ユーザーが開発リーダーであることの長所と短所を併せ持っている。中間評価まではSSPDの可視域感度を上げることが開発の主課題であったが、数値目標を全て達成し、フォトン検出器としてのSSPDのポテンシャルが具体的に示された。Triplet状態が検出できたらしいことも本装置の将来の発展性を示唆している。今後はSSPDの高速化とコリレータの安定高速化が、実用化への成否を握っていると考えられので、これらを着実に進めるべきである。設定された測定対象の細胞内速度論過程はかなり複雑なものであり、これが測定できればインパクトは非常に大きいと期待される。今後も着実に開発を推進すべきである[A]。