資料4

開発課題名「バイオ分子構造解析用マスフィルター・質量分析器の開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ)

チームリーダー :  野島 雅【東京理科大学 総合研究機構 講師】
サブリーダー :  堀田 昌直【(同)オフィスタンデム 代表】
中核機関 :  東京理科大学 総合研究機構
参画機関 :   (同)オフィスタンデム、(株)アンペール、兵庫県立大学工学系研究科、日本大学理工学部
T.開発の概要
 我が国発のこれまでにない原理で動作する質量分離器を開発する。本要素技術は、小型軽量ながらマスレンジ1〜40,000AMUまでの質量を選択することができ、マスフィルターとしても質量分析器としても応用が可能である。マスフィルターとしては、クラスターイオンビームの収束特性を損なうことなくクラスターサイズを選択することができる。これにより、バイオ分析時のフラグメントイオン種を自由に操作することが可能になる。また、連続ビームでMS/MSやMSn質量分析が可能となるため、迅速なバイオ分子構造解析が可能となる。
U.中間評価における評価項目
(1)回転電場質量分離ユニットの製作
 回転電場電極機構部製作においては、後段電極ユニットの電極4−電極8間が達成目標を0.5 μm超えているが、この程度は許容できると判断する。また、ここでのノウハウは来年度作成予定の二号機の作製に活かす。また回転電場制御電気ユニット動作確認では±8極(=16極)にてスナップショット的に周波数を操作できている。50kHz〜1MHz帯域については±100 V出力であり、今後二号機以降で±200 V出力を達成する必要がある。それ以外の帯域では数値を達成しており、二号機の開発においてもノウハウを活かすことができる。
(2)イオンビームに対する質量分離性能動作テスト
 回転電場動作テストでは、1個での動作と2個連動させての動作とで確認を行った。一段の回転電場による円環パターンは確認できている。今後は二段を用いた場合の円環パターンの取得を目指す。
 質量スペクトル採取は、スポットにすると瞬時に蛍光体が焼けてしまうため輝点の確認は困難であった。吸収電流像の像分解能が10ミクロン以下であることからスポット径も十分に絞れていると予想する。現在のところ一段電場でのみの動作であるため、所定のマス分離が出来ていない。
V.評 価
 後段ユニットの製作が予算上遅れたため、初段の性能評価を中心に、設計仕様に係る電極配置精度、周波数特性、出力電圧、集光スポット形状などについて、間接的な確認に留まらざるを得なかった事情は理解できる。質量分離の検証など一部未達成の機能もあるが、一段ユニットのイオンビームの円環収束像を得るなど各部材の製作と組み立てにおいて、ある程度の進捗度が認められる。
 今後の課題として、イオンビーム光軸と蛍光板の最適化に一層取り組むとともに、集光面の収差を早期に確認し、分解能のさらなる向上を目指していただきたい。過去に実施したイオン軌道や位相のシミュレーションによる定量評価を参照するとともに、電極配置の精度を一層高めるなど、対称に位相整合すべき後段ユニットとの接合において発生が懸念される多くの技術的課題を克服することが期待される。また、後段ユニットの完成を急ぎ、動電場のみの動作で超高精度な質量分離を可能にする世界初のコンパクトな質量分析器の開発を実現すべく、効率的・効果的に開発を推進すべきである。[B]