資料4

開発課題名「磁気MEMSを利用した微小振動計測システムの開発」

(平成25年度採択:最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ)

チームリーダー :  石山 和志【東北大学 電気通信研究所 教授】
サブリーダー :  徳永 博司【株式会社M.T.C. 開発部 代表取締役】
中核機関 :  東北大学 電気通信研究所
参画機関 :  株式会社M.T.C.、テセラテクノロジー株式会社
T.開発の概要
 超高感度振動計測システムの開発を行う。磁歪薄膜技術とMEMS 技術を融合させた磁気MEMS技術により現行の金属ひずみゲージの1万倍の感度を有する検知素子を開発し、極微振動を検知するシステムを実現する。これにより、例えば橋梁の振動を橋脚根元付近に取り付けた装置で計測可能となり、その振動スペクトルから健全性の診断を可能とする。さらにこの技術は振動を駆動源とする環境発電分野への展開も期待される。
U.中間評価における評価項目
(1) Siウエハ上に成膜した磁歪薄膜の異方性制御手法確立
 磁歪薄膜材料の組成制御、熱処理条件の制御、ならびに試料形状の制御により異方性磁界を0.4〜4 kA/mの範囲で制御することに成功した。また、磁歪薄膜の成膜条件、特に製膜時の膜厚プロファイルをスパッタリング時のガス導入量などのパラメタで制御し、誤差2%以下のスパッタリングレートを確立した。これにより、作製するセンサの特性ばらつきが押さえられ、歩留まり良くセンサを作製できると期待される。また磁界中で磁歪薄膜の熱処理を行い、最適条件は240 kA/mの回転磁界中で360 ℃、2時間であることを確立した。
(2)MEMSカンチレバー構造と磁歪センサの融合構造構築
 磁歪薄膜の膜厚を高い精度で制御した結果、不均一性の最も大きな場合であっても最小値0.73ミクロン、最大値0.79ミクロンの範囲に制御することに成功し、カンチレバー上での磁歪薄膜膜厚精度を±5%以下の制御に成功した。またひずみ検出原理を実験的に検証し、ゲージ率640のひずみ検出特性を実現した。当初の目標である20を大きく超えるデバイスが実現できた。
V.評 価
 誤差2%以下の安定したスパッタリングレートを達成し、成膜後の熱処理条件と膜形状の制御により、所期の異方性磁界を達成する製造法を確立した。またMEMSカンチレバー上に成膜した状態での振動特性の最適化手法も確立しており、順調な原理検証が進んでいる。今後は、振動計測の再現性や安定性に及ぼす成膜状態とそのプロセス要因、膜の安定性・環境耐久性の要因、カンチレバー構成などの面から精査したうえで、早期に実証実用化にステップアップすることが望ましい。今後も着実に開発を推進すべきである[A]。