資料4

開発課題名「耐放射線性を有するアクティブ駆動HEEDの実用化開発」

放射線計測領域 革新技術タイプ 要素技術型

開発実施期間 平成24年5月〜平成26年3月

チームリーダー :  渡辺 温【パイオニア(株) 研究開発部 第一研究室 研究3課 課長】
サブリーダー :  持木 幸一【東京都市大学 工学部 教授】
中核機関 :  パイオニア(株)
参画機関 :  東京都市大学、パイオニアマイクロテクノロジー(株)
T.開発の概要
 本開発チーム独自の冷却陰アレイであるHEED(High-efficiency Electron Emission Device)を応用し、耐放射線性に優れた監視カメラ用の撮像素子(アクティブ駆動HEED)を開発する。この耐放射線性に優れた撮像素子は、低電圧(約20 V )で駆動するため、消費電力が少なく、作業ロボットなどに実装することができる。これによれば、事故の起きた福島第一原発周辺地域のような高放射線領域においても長時間鮮明な画像を得ることができるため、周辺地域の震災からの復興を加速することが期待される。
U.開発項目
(1)ガンマ線耐性
 アクティブ駆動HEED下地ICの耐放射線性を向上し、ICを構成する全ての半導体素子において目標以上のガンマ線耐性を得ることができた。確認した半導体素子は全て、線量率で1 kGy/hr以上、累積線量で20 kGy以上で実使用上問題ない素子特性であることが検証できた。
(2)撮像素子試作
 耐放射線性が向上した下地IC上にアクティブ駆動HEEDを形成し、駆動電圧 21 V、エミッション電流 5.8 μAを得ることができた。アクティブ駆動HEEDと、光電変換膜としてHARP膜を組合せた撮像素子を作製し、線量率:480 Gy/hr、累積線量:20 kGyのガンマ線照射下で、動画撮像30 fps を確認できた。
(3)HARP膜、MPPC、CdTeおよびアモルファス-Si膜に対する耐放射線性評価
 HARP膜とアモルファス-Si膜において、目標を上回るガンマ線耐性が確認でき、 HARP膜はHEEDと組合せた撮像素子として性能を検証することができた。CdTeと α-Si膜は、HEEDとの適合可能性として、電子ビームにより可視光像を読出すことができた。以上より、HEEDおよび適合する光電変換部としては、HARP膜とアモルファス-Si膜が優位であることがわかった。
V.評 価
 高線量の環境下において使用可能なカメラ実現に向けて、耐放射線性を向上させた独自の電子線アレイであるアクティブHEEDおよび撮像素子を開発した。アクティブHEEDに関連する駆動ICを構成する半導体素子、光電変換素子についても耐放射線特性を検討し、高線量率下あるいは累積高線量で損傷が少ない撮像素子の要素技術を固めたことは評価できる。また、従来開発されてこなかった高線量率場での可視画像とガンマ線を同時に計測できるカメラの実現性を示唆する成果が得られたことは特筆に値する。福島での事故原発の周辺地域や発電所内をはじめ、国内外の原子力発電所での活用に向けてニーズが高く、技術の実用化への道筋をはっきりとさせ、迅速に行うことが期待できる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。