資料4

開発課題名「太陽電池モジュール高精度インライン計測評価装置の開発」

グリーンイノベーション領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成23年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  藤原 裕之【岐阜大学 工学部電気電子・情報工学科 教授】
サブリーダー :  杉本 克雄【大日本スクリーン製造(株) PV ソリューション統括部 担当課長】
中核機関 :  岐阜大学
参画機関 :  大日本スクリーン製造(株)
T.開発の概要
 薄膜シリコン太陽電池モジュールの高効率化・低コスト化による飛躍的な普及拡大を目的とし、太陽電池構成層の非破壊・高精度評価が可能な分光エリプソメトリー技術を駆使したモジュール製造時のインライン評価技術と、太陽電池モジュールの局所太陽電池特性を直接評価可能な計測評価装置を新たに開発し、大面積モジュールに対する構造評価技術を太陽電池特性評価技術と統合した高精度インライン計測システムの構築を目指す。
U.評価項目
(1)オフライン用エリプソメトリー解析技術の開発
 薄膜シリコン太陽電池を構成する各層の膜厚・膜質を同時に評価できる分光エリプソメトリー解析技術を確立した。a-SiC:H層、μc-Si:H層の膜厚測定精度目標1 nm以内を達成した。さらに、ZnO層についてもキャリア濃度の精度1x1019 cm-3を実現した。
(2)インライン用エリプソメトリー解析技術の開発
 2接合型薄膜太陽電池モジュールの薄膜構造をインラインで評価するエリプソメトリー解析技術を開発した。2領域に分割した光学モデルを構築し、膜厚評価精度2 nm、面内分解能5 mm及び測定・解析時間10秒以内の目標を達成した。
(3)光学シミュレーション技術の開発
 オフラインマッピング計測から評価される太陽電池各層の膜厚・膜質を光学シミュレーションによる解析技術を開発した。具体的には、光学アドミッタンス法を応用し、新しい簡易計算法から、太陽電池の分光感度スペクトルを誤差10%以内で高精度に再現した。
(4)太陽電池特性面内評価装置の開発
 大面積モジュール内の局所的な短絡電流密度を評価する測定手法および太陽電池モジュールの要素セルにライン光を照射し、要素セルの電流-電圧特性を評価する技術を開発し、面内分解能5 mm、電流密度測定精度0.01 mA/cm2が得られ、目標を達成した。
(5)テクスチャー基板用高輝度測定器の開発
 高ヘイズ率テクスチャー基板の高精度エリプソメトリー測定を実現するため、高輝度光源を開発した。Xeランプを用いた光源ユニットを完成し、測定の支障となるXe輝線は光学フィルターの最適化により解決した。ヘイズ率50%膜に対してΨスペクトルの標準偏差≦0.02°を実現した。
V.評 価
 太陽電池の特性評価技術と構造評価技術の開発は順調に進み、当初の開発目標は各項目とも達成したものと評価される。特にシリコン系薄膜太陽電池の局所特性面内分布を短時間で計測できるようになった点は産業界の生産技術面の向上に意義深い。本課題では、太陽電池特性の面内分布計測と、エリプソメトリーを利用した膜厚測定を分けて開発したが、両技術を融合させた一体型の高精度インライン装置を実用化できれば、瞬時に生産上の問題点が把握可能となり、更に産業界への貢献度も高まるものと期待できる。今後、開発成果の事業化へ向けた取り組みを引き続き行うことが期待される。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。