資料4

開発課題名「脳活動画像表示システムの実用化開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成23年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  武者 利光【(株)脳機能研究所 代表取締役会長】
サブリーダー :  三宅 美博【東京工業大学 大学院総合理工学研究科 教授】
中核機関 :  (株)脳機能研究所
参画機関 :  東京工業大学、千葉工業大学、日本光電工業(株)
T.開発の概要
 増加の一途を辿っている我が国のアルツハイマー型認知症患者(AD患者)数を減らすべく、認知症の早期発見・早期診断をより効果的・効率的に実現し、投薬療法や種々のリハビリによって発症そのものや発症後の症状の進行を遅らせることにより、低コストで、安全の高い、容易な診断技術の開発及びその実用化を行う。
U.開発項目
(1)臨床データベースの再構築
 筑波大学で実施された茨城県利根町における高齢者有病率疫学調査(以下「利根疫学調査」)で得られた、健常者(52名)とAD患者(20名)をベースにその感度特異度を80%で分離できる解析技術を完成している。その臨床応用のため、追加されたデータ健常者(97名)、AD(122名)のデータベースを基に感度特異度を検証したところおおむね80%程度の分離が確認されている。
(2)治療可能な認知症治療効果の測定の検証
 頸動脈狭窄による脳血管性軽度認知症データは、済生会富山病院で患者55名について脳波測定され、利根疫学調査による健常者52例を特異度としたときのVCI群 の感度は約90%程度で識別できている。
(3)NATのエビデンス計測
 FDG-PET測定と同日脳波測定のデータは、194名で延べ300件を確保している。その健常者50名を健常者群として標準化し、9名のAD患者の測定データを検証した結果、低周波領域(4.69 Hz-6.25 Hz)で類似度相関を確認できた。一方高周波(17.2 Hz-18.8 Hz)での対応関係は認められなかった。
(4)計算の高速化、ネット解析におけるユーザーインターフェースの開発
 解析計算のための新アルゴリズムの開発により演算処理時間は理論上約1%にまで短縮し、数値計算処理結果をサーバー内で出力するためのソフトウェアを完成させて、サーバー内に実装している。
(5)脳電位センサーの改良と試作
 脳電位測定センサー(ヘルメット型)の試作モデルは完成しているが臨床現場での応用には形状、操作上の課題が依然残っている。センサーの開発は現在、医療機器製造販売メーカーと共同で別途改良開発中である。
 早期発見を実証するためには、正常状態から徐々にADへ移行する過程を記録した例が必要である。その可能性を示す方法は提示できたが、ADへの移行を今回の期間中に記録することはできなかったため、継続して実証データを得ることを試みている。
V.評 価
 神経細胞活動の同期性の乱れを特徴づける指標にパワーの低下を特徴づける指標を加えることにより識別感度80%を達成している。現行のFDG−PETの90%には及ばないものの放射性同位体を用いず安価に測定可能であり、医師の評価も高い。残念ながらAD患者の早期発見を実証しておらず、またインターネットを介した解析についてはチーム体制の変更もあり、本開発期間中には実現することが出来ていない。本開発は、目的を達成し得る技術は開発したものの、その趣旨に相応しい成果を挙げるまでに至っていないと評価する[B]。