チームリーダー : |
越川 孝範【大阪電気通信大学 客員研究員】 |
中核機関 : |
大阪電気通信大学 |
参画機関 : |
サンユー電子株式会社、名古屋大学
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- T.開発の概要
- 本事業「要素技術プログラム」で得られた成果をもとに、スピントロニクスにとって重要な磁性薄膜の高性能化を行うために、高輝度・高偏極・長寿命かつ三次元に自在にスピン方向を操ることができるコンパクトな「三次元スピン回転偏極電子ビーム装置」を開発し、低エネルギー電子顕微鏡(LEEM)に搭載して高分解能・高速磁区観察を実現する。具体的には、今まで2機で行ってきた三次元スピン回転を1機で行う新しい「スピン回転器」の提案を行うなど、機器の実現を図る。
- U.開発項目
- (1)三次元スピン回転偏極電子ビーム装置
- 三次元スピン回転偏極電子ビーム装置の小型化(電子ビーム電子源から三次元スピン回転器までの距離を500 mmに短縮)に成功した。高いスピン偏極度と磁区像の高コントラスト性により、分解能15 nm以下を達成した。画像取得時間については、データ転送の制約のため、従来より高速であるが1フレームあたり14 msに留まった。
- (2)高量子効率カソードの開発
- フォトカソードの構造最適化を進め、反射防止膜により1.3倍の効率向上、中間層吸収低減により2.4倍の効率向上をそれぞれ達成した。また、歪み補償超格子構造の採用により、300 nmの膜厚で量子効率0.5%を達成した。
- V.評 価
- 本課題は、要素技術タイプ(H17〜H21)で開発したスピン回転偏極電子ビーム装置の小型化と改良、フォトカソードの高輝度化・長寿命化などを行い、それらをLEEMに搭載して磁区観察の高分解能化と高速化を目指すものである。スピン回転偏極電子ビーム装置の小型化、フォトカソードの量子効率向上などについては目標を概ね達成した。しかし、開発終了時点では偏極電子ビーム装置とフォトカソードのそれぞれ個別の開発と評価に留まっている。今後は、小型偏極電子ビーム装置と高効率フォトカソードを組み合わせた総合評価を行うと共に、磁区観察の高速化実現も期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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