チームリーダー : |
清水 禎【物質・材料研究機構 強磁場ステーション ステーション長】 |
サブリーダー : |
齋藤 一功【(株)神戸製鋼所技術開発本部 電子技術研究所 超電導研究所 室長】 |
中核機関 : |
物質・材料研究機構 |
参画機関 : |
(株)神戸製鋼所、理化学研究所、(株)JEOL RESONANCE
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- T.開発の概要
- NMR装置の強磁場化を加速することで、従来困難であった生体高分子中の酸素、金属原子等の四極子核の計測が可能となり、新薬創製等幅広い分野での応用が期待される。本開発では、これまでNMR磁石には使用が困難とされてきた酸化物系超伝導線材を計測技術の高度化を含めた磁場安定化システムの開発により適用可能とすることで、1 GHzを超える24T NMRシステムを完成し、その有用性を実証する。
- U.開発項目
- (1)NMR磁石の高性能化
- 金属系低温超伝導(LTS)マグネットの内層コイルを酸化物系高温超伝導(HTS)コイルに置き換えることにより到達磁場24.0 テスラ(1020 MHz)を達成した。また、磁場均一性を評価し、クロロホルム溶液の1Hスペクトル半値幅10 ppb以下、アダマンタン粉末の13Cスペクトル半値幅1 ppm以下を確認した。
- (2)計測システムの高性能化
- スペクトル安定性については、重水の2Dスペクトルで2 ppb/10 h以下、KBrの81Brスペクトルで200 ppb/10 h以下を確認した。また、標識ペプチドの17Oスペクトル計測では従来の低磁場データと比較して顕著な高感度・高分解能を確認した。
- V.評 価
- 本課題は、NMR用の内層HTSコイルを新たに開発し、LTSコイルだけでは限界とされる1 GHzを超える磁場を発生させるマグネットとそれを用いたNMRシステムを開発することを目指したものである。予測を超える幾多の困難と障害を乗り越えて開発した様々な要素技術を統合し、NMR用マグネットとして完成させ、目標である1 GHzを超える到達磁場を達成したことの意義は大きい。このシステムを用いて溶液及び固体試料のNMR測定を行い、高感度かつ高分解能の計測結果も確認されている。今後、本開発で得られた知見、要素技術や知的財産権を有効に活用して、高磁場NMRの更なる小型化・高度化へ向けて大きく展開することを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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