資料4

開発課題名「放射性物質の高分解能3次元・直接イメージング技術の開発」

(平成24年度採択:「放射線計測領域」革新技術タイプ(要素技術型))

チームリーダー :  坂本 哲夫【工学院大学 工学部 教授】
サブリーダー :  奥村 丈夫【(株)日本中性子光学 取締役】
中核機関 :  工学院大学
参画機関 :  (株)日本中性子光学、(株)阿藤工務店
T.開発の概要
 「単一微粒子3次元元素分布分析装置」を応用・発展させることにより、細胞・物質レベルでの解明がされていない放射性物質の蓄積状況・態様を明らかにする技術を開発する。この技術により、セシウム137など放射性同位元素を含む全元素・同位体の検出が可能となり、魚類・肉類・農作物などの細胞内部、土壌粒子、廃棄物の焼却灰粒子にセシウムが付着している像を1粒子10〜20分、最高40 nmの分解能でイメージングできる。特に、土壌中の雲母や植物体のケイ酸成分(植物石)にセシウムが取り込まれるという基礎データに基づき、これらの実証と除染対策への応用につなげる。被災現地における汚染材料の収集と先端分析機器の開発を密接に連携させ、震災からの復興を加速することが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)含水試料への対応改良
 凍結装置を製作し、液体プロパンを冷媒として用いることによって、含水試料の急速凍結を実現した。蓋付き試料台ならびに搬送ロッドの断熱処理を行うことにより、-100 ℃以下を保ちつつ冷却から分析室への搬送を700秒で行うことができた。
(2)エアロゾルサンプリングと空間線量測定
 (社)南相馬除染研究所の協力により、エアロゾル採取地点において、地表5 cm、80 cmにおいての空間線量率を測定した。H25年6月以降毎月、最低4箇所、最大9箇所でサンプリングし、採取したエアロゾル試料は本開発機器により随時分析を行っている。
(3)分析試料の前処理
 円筒状容器に水を高速に供給し、回転水流中での雲母・植物石の浮遊特性を利用するサイクロン法により、土砂から数μm〜数10 μmの雲母・植物石を分離回収可能にした。処理後の植物石の組成は蛍光X線分析により評価し、処理時間がかかる腐食法に比較して焼却法による植物石の処理が有効であることを確認した。
(4)実試料分析
 前処理を施した植物石試料についてはレーザー共鳴イオン化法という新しい手法の導入によって放射性Csの質量ピーク検出(S/N=7.7, 測定時間=4時間)に成功した。
V.評 価
 本課題は、分析試料を採取する手法と、採取した分析試料から質量分析装置で超微小量の放射性セシウム(137Cs+134Cs)を定量する方法の開発である。前者の目的については、放射性セシウムが雲母あるいは植物石に特異的に吸着することから、それらの物質を選択的に回収するシステムを構築するとともに、エアロゾル中の放射性セシウムを回収するシステムの構築にも成功した。後者の目的である質量分析計での放射性セシウムの検出は、質量分析計の二次イオン検出器の効率向上やイオンビームによるスパッタ量の増大、イオン化共鳴レーザーの照射により達成している。レーザーの繰り返し周波数を上げることで、実現性のある観察ができる見通しが立っており、最終的に自然界に分布している植物石単粒子の放射性セシウム分布を観察できるまで感度の向上とプロトタイプ機から実用化システムに向けた開発を着実に推進すべきである。[A]


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