チームリーダー : |
高橋 忠幸【(独)宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 教授】 |
サブリーダー : |
黒田 能克【三菱重工業(株) 航空宇宙事業本部 誘導・エンジン事業部 電子システム技術部 主席技師
】 |
中核機関 : |
(独)宇宙航空研究開発機構 |
参画機関 : |
三菱重工業(株)、名古屋大学 |
- T.開発の概要
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独自の次世代技術「Si/CdTe半導体コンプトンカメラ」を発展させ、180度の視野を持つ超広角撮像、高精度カラー、核種分離を特徴とする可搬型ガンマ線可視化装置の実現を目指す。この装置により、1〜5 μSv/h程度の環境下で、環境バックグランドの数倍の強度のホットスポットを10分以内で検出でき、屋根などの高所に集積する放射性物質も画像化することが可能となる。また、装置の軽量化(5〜10 kg程度以下)により、山林や家屋の裏など、車ではアクセスが難しい環境にも導入が可能である。高線量環境(数10 μSv/h)にも対応し、警戒区域での除染作業の効率化や除染作業後の評価などにも活用が期待される。
- U.中間評価における評価項目
- (1)「超広角コンプトンカメラα」製作
- Si検出器トレイを 32 積層した Si モジュールの下に CdTe 検出器を 8 積層、さらに Siモジュールの周囲4方向に CdTe 検出器を配置したカメラサイズ約 10 x 10 x 10 cm 、重量約 3 kgの「超広角コンプトンカメラα」を開発した。2.8 MBq の137-Cs 標準点線源を 1 mの距離に配置して、10 秒以内の測定で画像化に成功した。また、662 keV のガンマ線に対するエネルギー分解能 2.2 % (FWHM) を実測し、原理実証機に比べて約 30 倍の感度が達成された。さらに、180 x 180 度(半球)の視野が得られていることを確認した。
- (2)「超広角コンプトンカメラβ」用低リーク電流 Si半導体素子の試作
- 「超広角コンプトンカメラβ」用にピクセルサイズ1.83 mm と 2.47 mmのSi半導体素子のリーク電流を測定したところ、3.2 mmのSi半導体素子と比較して、それぞれ約 40 % と約 60 % に低減できていることを確認した。また、大面積 Si ピクセル検出器とSi ドリフト検出器についての基礎特性評価用素子を設計・制作した。
- (3)「超広角コンプトンカメラβ」用国産アナログLSIの試作
- ダイナミックレンジやノイズレベルなどアナログ部の性能最適化と、デジタル部のロジック検証を経て低ノイズ 64 チャンネルアナログASICの回路設計を行った。
- V.評 価
- 本開発は、実証機を拡張した「超広角コンプトンカメラα」と,その知見に基づき,小型化,低コスト化をめざした実用機モデル「超広角コンプトンカメラβ」を開発する。「超広角コンプトンカメラα」に加え、予定の計画を加速して、「超広角コンプトンカメラα-mini」を開発し、それにもとづいて商用機「ASTRO-CAM 7000HS」を市場に提供したことは非常に意義深いことである。「超広角コンプトンカメラα」においても、当初の計画目標値をすべて達成した。また、除染計画に最適化された「超広角コンプトンカメラβ」についても、高性能化も考慮しつつ、着実に検討が進められており、商品化が期待される。また、これらのカメラの電子部品を含めて純国産で開発されていることは高く評価できる。今後は、ユーザの使い易さやデータ処理・解析の効率性を考慮するとともに低価格化を目指し、より多くの地方公共団体等での活用を図ってほしい。特許戦略も検討しながら、開発を積極的に推進すべきである。[S]
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