資料4

開発課題名「高速・高感度の食品放射能検査装置と大容量標準線源の実用化開発」

放射線計測領域 実用化タイプ(短期開発型)

開発実施期間 平成24年4月〜平成25年3月

チームリーダー :  井上 芳浩【(株)島津製作所 医用機器事業部技術部 副部長】
中核機関 :  (株)島津製作所
参画機関 :  京都大学
T.開発の概要
 30kgの米袋をコンベア輸送し、測定時間5秒で測定下限値12.5Bq/kg以下のスクリーニング検査が可能な、高速かつ高感度の食品放射能検査装置・周辺機器の開発・性能実証試験を行う。また、30kgの米袋の放射能濃度測定の信頼性確保のために大容量の標準線源の開発にも取り組む。本成果は農協などの米倉庫における入庫・出庫時の検査に利用され、米の全袋検査にも対応することが可能である。
U.開発項目
(1)食品放射能検査装置の開発
 放射線検出面積を増加することにより(既存のプロトタイプ機の2倍面積)、装置の高感度化・高速化を行なった試作機の開発を完了し、測定下限値12.5Bq/kg以下、測定時間5秒/袋で30kg米袋のスクリーニング検査が可能である。性能実証実験には、開発した大容量標準線源を用い、検査データを無線通信でデータサーバに保存する機能、データサーバ上で検査データを表示する機能の開発を完了した。
 周辺機器(運搬補助機構、整形器、印字装置、仕分け装置、積載補助機構)の開発を完了し、検査の省力化・高速化を行い、1日あたり検査数(10時間)約3000袋以上が可能となった。
(2)大容量標準線源の開発
 本開発専用の放射能濃度定量分析用計測システムを立ち上げ、定量のための濃度検定測定に用い、体積試料作製法として、汚染土から、放射性セシウムを抽出する方法を開発し、抽出したセシウムを、アルミナボール、アクリルボール、沸騰石および玄米に吸着させて、安定化する方法を用いた。大容量標準線源には、沸騰石を採用し、これにセシウムを吸着させ、ニスで表面をコートする方法で、3種類の放射能濃度(35、80および94Bq/kg)を作製した。
(3)フィールド検証
 現地でのフィールド検証を行い、米倉庫に開発した装置本体および周辺機器が実際に据付け可能であることを確認し、パレットに搭載した米袋の搬入から検査終了後の搬出までの1連の検査工程が可能であること検証した。平成24年8月末頃から、福島県にて、米の全量検査が開始され、本開発の一部(食品放射能検査装置本体のデータサーバ機能、および周辺機器の印字装置)は製品として使用された。
V.評 価
 プロトタイプ機の検出器を高感度化し、周辺機器と大容量標準線源を開発することにより、高速・高感度の食品放射能検査を可能とするシステムの実用化を目的としている。30kgの玄米袋中の放射性セシウムの測定において、測定下限値12.5 Bq/kgの高感度で、5秒/袋の高速測定を可能とした。また、本開発の一部は既に製品として使用されている。機器性能の向上だけでなく、確認用の大容量試料を作成して、測定システムの妥当性を確認する手法も取り入れ、品質確保に努めたことは特筆すべき成果である。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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