資料4

開発課題名「バイオ蛍光法によるアスベスト自動計測ソフトウェアの開発」

一般領域 ソフトウェア開発タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  黒田 章夫【広島大学 大学院先端物質科学研究科 教授】
サブリーダー :  河崎 哲男【(株)インテック 先端技術研究所 所長】
中核機関 :  広島大学
参画機関 :  (株)インテック、(有)シリコンバイオ
T.開発の概要
 これまでに開発したバイオ蛍光法によるアスベスト検出は、簡便な蛍光顕微鏡でアスベストの形態と物性の両方を捉えつつ、光学顕微鏡としてはこれまでにない感度でアスベスト繊維を検出する優れた方法である。本課題ではバイオ蛍光法をもとに、従来の目視による判定をバラツキのない自動判定に変えて、アスベストを迅速、かつ、誰にでも計測できるソフトウェアを開発する。これにより、解体現場でのリアルタイムなアスベスト計測を実現する。
U.開発項目
(1)高精度なアスベスト計測のための基本ソフトウェア開発
 環境調査会社等ユーザーからバイオ蛍光法を用いたアスベスト検査の現状、画像分析等をヒアリングして、ソフトウェアの要件を抽出し、要件定義書の十分な検討の後、基本仕様、詳細仕様を確定した。画像データ分析に当たって、画像の輝度補正、アスベストの種類を判別する機能等の画像前処理ソフトウェアを開発し、アスベストの環境濃度を計算する一連の基本的ソフトウェアを構築し、目標を達成した。
(2)プロトタイプ機への搭載と実サンプルを用いた信頼性向上機能の開発
 実サンプルの画像にはさまざまな粒子状のノイズがあり、繊維状であるアスベストと区別するアルゴリズムを検討し、特徴あるパラメーターから粒子除去フィルター機能を有するソフトウェアを作成した。また、マニュアル化されている計測ルールに基づいたアスベスト判定機能をソフトウェアで構築した。さらに、マニュアル通りに検討しても判定の難しい画像は分離し、それについては最終的に人の目による判断が下せるようにした。それによって、偽陰性率5%、誤認識率7.5%となり、最終目標を達成した。
(3)ユーザビリティの高度化機能の開発
 実サンプル採取時の一連の付帯データ、および画像データ等を一元的に管理する機能、可視化機能、報告書作成時に有効なレポーティング機能等ユーザーの要望に沿った機能を付加したのみならず、短時間で処理可能にし、ユーザビリティ高度化のプログラムを確立した。1サンプル計測時間約30分を実現し、目標を達成した。また、従来法である熟練者による位相差偏光顕微鏡法の測定結果との相関係数も0.76が得られ、最終目標(0.7以上)を達成した。
V.評 価
 本プログラム要素技術タイプで開発したバイオ蛍光法によるアスベスト検出技術を更に発展させ、蛍光顕微鏡と一体化した画像解析ソフトウェアを開発し、誰でも簡単にアスベスト環境濃度を現場において短時間で計測できるシステムを構築する試みである。アスベストの複雑な判定基準を満たしたソフトウェアの開発に成功し、自動判定だけでなく、半自動機能を付加したことにより、偽陰性率、誤認識率の目標を達成している。熟練した観察者でなくともアスベストを正確にカウントできるシステムが構築され、製品化も実現した。現場における短時間測定が可能になり、本方式が一日も早く公定法として採用されることを期待する。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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