資料4

開発課題名「多ピクセルTES型X線検出器の開発」

一般領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  前畑 京介【九州大学 大学院工学研究院 准教授】
中核機関 :  九州大学
参画機関 :  (独)物質・材料研究機構、(独)宇宙航空研究開発機構
T.開発の概要
 高いエネルギー分解能を持ち、ほぼ全元素からの特性X線ピークを分離した測定が可能なTES型X線検出器の多ピクセル化に関する開発を行う。本開発は、検出器のデバイス、実装技術、X線集光技術を含んでいる。本開発により、分析電子顕微鏡用にこれまでに開発した単ピクセルTES型X線検出器(500cps)に対して4倍程度の計数率を達成することが可能となる。このことで、走査透過型電子顕微鏡でナノスケールの高精度な元素分布マップの取得が期待される。
U.開発項目
(1)X線集光システム開発
 焦点位置での高い増幅率をもつX線キャピラリとその位置調整機能を有するX線集光システムを開発した。本集光システムをTEM鏡筒に取り付けることにより、TEM試料から放射されるX線は、キャピラリを通過後、その射出側焦点位置に置いた検出器に100倍の立体角で入射することを確認した。
(2)小型・低重心冷凍ユニット
 小型・低重心希釈冷凍ユニットを開発し、3He-4He混合器の温度を100mK以下に保持できることを確認した。
(3)多ピクセルTES型X線検出器動作実証
 4ピクセルのTES型X線検出チップを2段実装することにより、200eVから20keVまでの広いエネルギー範囲をカバーできる8ピクセルTES型X線検出器を開発した。また、本X検出器を搭載するスノートとして、四角柱形状の銅ロッド表面への電析による超伝導体三次元配線技術を開発した。スノートに搭載した8ピクセルTES型X線検出器で、5.9keVのX線に対してスペクトル計測を行い、分解能の半値幅として15eV、計数率として400cps/ピクセルを確認した。
V.評 価
 本課題では、高いエネルギー分解能を持つTES型X線検出器の多ピクセル化に関する要素開発を行った。多ピクセルX線検出器、三次元超伝導配線を用いた実装技術、X線キャピラリによるX線集光システム、小型・低重心希釈冷凍機など、個々の要素技術開発については概ね目標どおりの成果を達成した。ただし、全要素部品を一体に組上げてTEM実機での動作検証をするまでには至らなかった。今後、メーカーの協力を得て本開発成果が実用化されることを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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