資料4

開発課題名「中性子集光用非球面スーパーミラーデバイスの開発」

一般領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  山村 和也【大阪大学 大学院工学研究科附属超精密科学研究センター 准教授】
中核機関 :  大阪大学 大学院工学研究科
参画機関 :  (独)日本原子力研究開発機構
T.開発の概要
 非接触化学的形状創成法のローカルウェットエッチング法と、イオンビームポリッシュを援用したイオンビームスパッタ成膜によるスーパーミラー形成技術とを融合させ、世界最高性能の中性子二次元集光用非球面スーパーミラーデバイスの製造プロセスを確立する。これにより、高密度記録媒体の微小領域精密磁気構造解析などの高機能材料の開発促進が期待される。
U.開発項目
(1)中性子集光用スーパーミラー作製技術の確立
 非球面形状基板については、石英基板に楕円筒面形状を作製し形状誤差0.39 μm(p-v)、表面粗さ0.2 nm(rms)を達成した。上記基板上に平滑な1200〜6000層のNiC/Ti多層膜を形成した集光用スーパーミラーを作製し、1200層スーパーミラーにおいて反射率70%以上の性能を達成した。
(2)中性子集光用スーパーミラーの二次元集光性能の評価
 上記楕円筒スーパーミラー2枚をKB(Kirkpatrick-Baez)配置した光学系を設計・製作し、設計通りの集光径0.5×0.5 mm2を確認した。
(3)二次元集光用回転楕円面スーパーミラー作製技術の確立
 平滑研磨した石英製回転楕円面基板を用いたレプリカ法によって銅製の回転楕円面ミラーを作製し、3重に配置した集光デバイスにおいて2次元集光径として約0.1 mmを達成し、Gdパターンのラジオグラフィ測定により0.2 mmピッチのパターン観測に成功した。
(4)ユーザーによる中性子応用計測
 中性子即発ガンマ線分析実験を行い集光ビームの有効性を確認した。また中性子小角散乱実験において、装置の小型化につながる結果を得た。
V.評 価
 本課題は、大阪大学で長年培ってきた高度な表面加工技術、日本原子力研究開発機構で開発する高度な薄膜蒸着技術、J-PARCにおける中性子線利用技術の三つを組み合わせることで世界トップの中性子線集光装置を開発しようとするものである。中性子集光用スーパーミラー、二次元集光用回転楕円面スーパーミラーともに目標性能を達成した。応用面についても、中性子即発ガンマ線分析および中性子小角散乱実験において、放射光施設のユーザーニーズに十分かなう中性子源としての有効性が確かめられており、比較的簡便に利用できる回転楕円面ミラーを含めて、今後の応用展開、市場性に期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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