資料4

開発課題名「臨床用PETのための68Ga標識薬剤製造システムの開発」

一般領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  中山 守雄【長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授】
中核機関 :  長崎大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
 PET(ポジトロン断層法)で用いられる短半減期核種はサイクロトロンを設置した大型の製造装置で製造される。しかしこれらの核種は、その半減期の短さから製造施設からの輸送時間に制限があるため、利用できる施設が限られている。短半減期核種の中でも68Gaは半減期が長い68Geから産生されるため、次世代の有用なPET用核種として注目されている。本開発では68Gaをサイクロトロンなどの大型施設を用いずに、安定的に供給できるシステムの開発を行う。この開発によってPETの利用可能施設が増え、診断の地域差の解消が期待される。
U.開発項目
(1)68Ge吸着剤の設計・合成と最適化
 本開発では、68Gaの溶出効率を改善し、実用可能なまでに高める事に注力した。有機系ポリマーからは、最適の吸着剤を得るには至っていないが、高分子基体の親水性向上が、改良につながるという知見をもとに開発を進めた。その結果、多糖系ポリマー(デキストラン系のSephadexを使用)にN-メチルグルカミンを導入した吸着剤で、飛躍的な68Ga溶出効率の改善を達成できた。なお、実際に、使用する場合、半減期経過前に使用を停止すると考えられ、1mol/Lの塩酸で68Geのほぼ100%をカラムから溶離できるという特性も有益であると評価している。
(2)68Ga標識画像診断薬剤の製造
 当初、68Ge-68Gaジェネレータの用途拡大を図る意味で、新たな68Ga薬剤の開発を平行して進める計画であったが、実用化につながる68Ga吸着剤の開発の可能性が高まった事と、最終年度に、小動物用PET/SPECT/CT機の導入が決定したこともあって、すでに報告されている配位子及び68Ga標識薬剤を用いる方が、今回のジェネレータシステムの性能を評価し、実用性を裏付ける事が出来ると考え、重点を、新規化合物から既存薬物へと移し、間接法により、高収率で、68Ga標識薬剤が製造できる事を確認した。なお、アミロイド画像化のための68Ga標識薬剤の開発は重要な開発課題といえるが、同じ金属核種である99mTcを用いた研究結果を踏まえると、まだ、68Ga解決すべき難問が多く存在しており、未達成の状況である。
(3)68Ge-68Gaジェネレータによる68Ga標識画像診断薬剤製造システムの構築
 最適化した吸着剤(Sepha(15)-MG)1mLを、カラムに充填し、2mCi(74 MBq)のジェネレータを作成した。スケールアップによる、大きな溶出率の低下は無く、繰り返し使用している。配位子に、溶出液を加えるだけの簡便な操作とその後の加熱で、68Ga標識が可能であった。実施例として、68Ga-NOTA-RGDを製造し、PET画像を得る事ができ、サイクロトロンを擁しない施設においても、PET画像がとれることを立証した。今後、企業と共同した試作機の作成に取りかかれると考えている。
V.評 価
 本課題は、大掛かりなサイクロトロンなどを使わずに臨床用PETに資する68Ge-68Gaジェネレータの開発とこれを利用した68Ga標識薬剤製造システムの開発である。アミロイド画像化のための68Ga錯体の開発については未達成ではあるが、N-メチルグルカミン型樹脂を用いた68Ge-68Gaジェネレータが目標通りの性能を発揮し、製造した68Ga−NOTA-RGDを用いて担癌モデルヌードマウスの悪性腫瘍のPET撮像に成功した点は高く評価できる。今後はジェネレータを完成させ、より多くのデータを蓄積することで実用化を進めることを期待したい。本課題は当初の目的を達成し、本事業に相応しい成果を得られたと評価する[A]。


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