資料4

開発課題名「マイクロロボットによるオンチップ高速除核・分注技術の開発」

一般領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  新井 史人【名古屋大学 大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
 体細胞クローン動物や一卵性双子、遺伝子改変動物などを作出するためには核移植操作が必要となるが、現状では顕微鏡下で熟練オペレータがマイクロマニピュレータを操作して行うため、自動化が困難である。胚操作技術の中でもっとも複雑な除核作業を自動化することを目的とし、「マイクロ流路中に導入した卵子の核の位置自動検出」、「マイクロロボットによる高速除核」、「除核後の卵子の自動分注技術」を開発する。
U.開発項目
(1)核検出、除核技術の構築
 マイクロ流体チップ中における流体内の卵子と核の位置を画像計測し、目視と比較して 計測制度±1μm以内、処理時間60msec/個以下を達成した。
 また、磁気駆動マイクロツール(MMT)をマイクロ流体チップに組み込み、除核精度24%(観察画像面積比)、処理速度5sec/個程度を達成し、最終目標を達成した。
(2)分注技術の構築
 インクジェット機構をマイクロ流体チップに取り付け、流路を通過する卵子を流速50mm/sに対し検出処理時間50msecで100%検出できた。
 また、インクジェット機構により卵子を打ち出す分注システムを開発し、流路内部にマイクロピラーを設けることにより卵子の分注で100%の成功率を達成した。
(3)除核、分注システム技術の構築
 マイクロ流体チップ内の卵子を磁気駆動マイクロロボットにより除核し、インクジェット機構により外部の培養ウェル中に分注するデスクトップシステムを構築した。処理速度は、10sec/個 を達成し、最終目標を上回った。
 また、除核卵子にドナー細胞をカップリングし、細胞融合後、3/3発生を確認し、桑実胚から胚盤胞に2/3成長したことを確認した。
V.評 価
 マイクロ流体チップに非接触磁気駆動マイクロツール(MMT)を組み込み、卵子の除核、分注を自動化するシステムにおいて、卵子の位置測定、制御、除核、分注の各要素技術を工夫して、計数精度向上、卵子の分注率100%などを達成し、システム処理速度で目標を上回る成果を得ている。その成果は、多数の国際学会の受賞につながっており、オンチップマイクロロボティクスの技術および学術体系の基礎を築いた。今後、幅広い展開が期待できる技術であり、具体的なユーザーニーズを踏まえた実用化への取り組みが望まれる。本開発は当初の要素技術開発目標を達成し高い国際評価を得たうえ、実用化に迫る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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