資料4

開発課題名「有機太陽電池用界面電界・寿命評価装置の開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  京増 幹雄【プレサイスゲージ(株) 技術開発室 室長】
サブリーダー :  岩本 光正【東京工業大学 大学院理工学研究科 教授】
中核機関 :  プレサイスゲージ(株)
参画機関 :  東京工業大学
T.開発の概要
 有機太陽電池は、大面積で安価な物ができる反面、光電変換効率が悪いことが問題となっている。本開発では、光電変換効率の良い有機太陽電池開発のため、光を電気に変換する機構の中でさまざまなパラメータを計測する機器の開発を行う。本開発により、変換効率を上げるために重要と考えられるパラメータの解析が可能となり、高光電変換効率の有機太陽電池の開発が期待される。
U.開発項目
(1)計測装置開発性能向上
 光軸調整機能の強化は、励起光、基本光の光軸の調整に重要で、調整機能を加えるのと同時に、励起光にフォーカサーを用いることにより、対物レンズ透過後の励起エリアの拡大を図り、安定した励起照射を実現した。また、同時にSHG(第二高調波)光を容易にフォトマルで受光できる構成を実現した。光対物レンズの専用化により、市販の対物レンズと比較して、測定可能な開放電圧0.5Vは、0.1Vまで可能となり、目的とする測定が支障なく測定できる分解能が確保できた。また、ドーナツマスクの導入により、開発当初、予想されていなかった有機太陽電池の裏面電極の反射による出力ピークのブロード化の課題に対しては、数10μmから数μmへと改善することができた。ドーナツマスクの幅の縮小と位置調整を加えることにより、1μm以下に改善できる。
(2)計測データ取得
 SHG光によるバルク・界面キャリア密度・電界評価を主にフラーレン、ペンタセンで実施し、分布特性、電界の位置特性を含め、特性がうまく得られることを確認した。ただし、バルクと界面の分離技術については、十分な方法が得られていない。SHGによる非破壊でのキャリアのライフタイム評価は分解能を10nsに向上させ、測定範囲も10ns−20msに設定できるようにした結果、十分な分解能での評価が可能となった。ペンタセン/フラーレン有機太陽電池の電子、正孔の個別のライフタイムの測定に成功しており、評価可能であることを確認した。評価結果とデバイスの整合性については、有機太陽電池の変換効率を変化させたデバイスの作成ができていないこと、良品と不良品の試料が入手できていないことから十分な評価は得られなかった。
(3)解析原理の確立
 SHG光の積層方向の電界分布評価については、課題として裏面電極の反射の影響により、Z軸方向の分布が正確でないことが確認されているため、分布評価に基づきソフトウェア処理による電界分布の評価を実施していない。選択的な多層構造内探索については、基本光を変更することにより、各層を分離して測定できることを確認している。特に、ペンタセン/フラーレン/バンクプロリンの三層構造において、バソクプロイン層により、キャリアライフタイムに変化が見られることが実験で明確化した。この層は、エキシトンブロッキング層と考えられていたが、電荷ブロッキング層としても働き、再結合電流を小さくしている。界面キャリアの挙動・寿命としては、各層の厚さが0.2−3ミクロンと薄いため、バルクと界面が同時に測定される結果が得られており、その値としてτ=10−4sが得られている。
(4)解析ソフトウェアの開発
 分布測定については、コントラスト法を用いたAF測定装置を本装置に組み込んだ結果、有機太陽電池の表面層を±1μmの精度で捉えることがでるようになった結果、数点測定を行い、X,Y,θx,θyステージと組み合わせて試料の平行度補正を行うことにより、分布評価を実現した。その結果、電界、ライフタイムとも、位置依存性があることを見出しており、有機太陽電池の開発に有効な知見が得られる装置となった。位置分解能が十分得られていないものの、選択的なキャリアの電界、ライフタイム評価が可能であり、その分布も評価できることから、実用的に利用可能な装置として仕上がった。
V.評 価
 本課題では、Z軸偏向の集束光を有機太陽電池試料に照射するときに発生するSHG光を検出することによって、有機太陽電池の特性を3次元空間で評価するための装置を開発することを目的としている。SHGスペクトルの検出、電界分布精密測定、キャリアの寿命計測、面内分解能に関して、開発目標を達成した。Z軸方向の位置分解能に関しては、裏面電極からのSHG光の反射などによって目標を達成できなかったが、全体として、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと考えられる。[A]


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