資料4

開発課題名「実時間型エアロゾル多成分複合分析計の開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  竹川 暢之【東京大学 先端科学技術研究センター 准教授】
サブリーダー :  平山 紀友【富士電機(株) 技術開発本部製品技術研究所計測技術開発センター計測機器技術部 部長】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  富士電機(株)、(独)海洋研究開発機構(平成23年度まで)、東京大学(理学部)(平成22年度まで)
T.開発の概要
 大気エアロゾルは気候変動や大気汚染に重大な影響を与える。これらの環境問題の解明に本質的に重要なパラメータ (粒径別化学組成、混合状態、光学特性など) を多角的・定量的に高速分析するために、レーザー・真空技術を駆使した複合分析計を開発する。本技術は、クリーンルーム・製造環境の粒子分析などにも応用可能であると期待される。
U.開発項目
(1)真空濃縮・粒子ビーム生成部分の開発
 空力学レンズは粒径0.8 μmで透過率90%以上・粒径2.5 μmでは50%以上、タンデムノズルは粒径0.5 μmで透過率95%以上・粒径2.5 μmで〜100%となり、ほぼ目標を達成している。両者を融合した複合化方式を完成させ、ほぼ目標を達成した。
(2)レーザー散乱・蛍光検出部分の開発
 粒径0.3 μm以上で3つの波長帯の蛍光検出が可能となった。また、標準粒子および実大気粒子の蛍光スペクトルデータを蓄積し、クラスター解析によって有機物を4種類に系統的に分類する方法を考案し、目標を達成した。
(3)レーザー散乱・白熱光検出部分の開発
 検出限界 (10秒)として散乱光粒径0.1μm、白熱光粒径0.08μm、数濃度0.3 個/cm3、BC質量濃度<0.01μg/m3を達成した。実験室で発生させたブラックカーボン粒子についてデータをまとめ、効率的に形状判別できる方法を開発し、目標を達成した。
(4)加熱-質量分析による濃度定量部分の開発
 硫酸塩の検出限界 (5分) 0.03〜0.04 μg/m3を達成し、最終年度に、粒子トラップの構造・材質の改善、レーザー強度の均一化、熱伝導の強化など様々な改良を施し、耐久性を向上させながら硫酸塩の検出感度を向上させた。この感度向上の結果、より短かい時間で上記の検出限界を達成した。当初目標に比べると若干不足しているが、世界最高レベルであり、大気観測の要求性能は満たしている。
(5)各要素技術の統合・プロトタイプの開発
 タンデム型ノズルと空力学レンズ の複合化方式に基づき、複合システムの効率的な構造設計を行った。プログラマブル・ロジック・コントローラ (PLC)、マイコン、PCを用いて、ハードウェアを連動制御するシステムを構築した。複合分析計プロトタイプ機の製作を完了し、実際の測定環境において目標性能が総合的に達成されていることを確認した。
V.評 価
 近年話題に上る大気浮遊微粒子(例えばPM2.5)を含む大気エアロゾルを複合的に分析する装置の開発である。分析精度の向上を重点的に進め、各要素の要求仕様を着実に達成して全体の複合機能にバランスよく組み上げ、リアルタイムで多くの成分情報を高感度に取得するという、目標仕様をほぼ達成していると認められる。  特に、精度を左右する粒子トラップを100%の効率で達成するSi3次元格子の開発は本技術の感度と信頼性を高めるものと評価できる。本装置は各検出機部分でも個別に利用可能であるが、実用化にあたっては、想定される利用者のニーズを踏まえつつ、具体的に戦略をもって開発を推進することを期待したい。本課題は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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