資料4

開発課題名「3次元発光イメージングシステムの開発」

(平成23年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  小澤 岳昌【東京大学大学院 理学系研究科 教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 生物発光タンパク質(ルシフェラーゼ)は、生理現象を可視化するツールとして広く活用されている。しかし、現在の発光イメージングは2次元画像しか取得できず、深度に関する情報を得ることは困難である。本課題では、光で発光のスイッチングが可能な「Photo-activatableルシフェラーゼ」を開発し、サブミクロンオーダーの3次元発光イメージングシステムを構築する。本技術は、基礎生命科学研究のみならず医学研究や医薬品開発において汎用的な装置となることが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)Photo-activatableルシフェラーゼの開発
 @ルシフェラーゼ分子内再構成法、Aルシフェラーゼ分子間再構成法、B発光基質ルシフェリンを光制御する方法を検討した。@及びAでは、未だ数値目標を達成していないが、BのCagedルシフェリンによる発光測定では、光照射前後における発光値の変化量(S/B比)が最大300倍であり、目標値を大きく上回った。また、光照射後に"S/B比"10倍以上に到達する時間は、照射光の強度・時間に左右されるものの2秒以内を実現し、達成目標を上回った。更に、本方法は完全長ルシフェラーゼを使用するので、発光強度が充分目標値に到達している。
(2)3D発光イメージング用顕微鏡の基本システムの確立
 ピンホールアレイの作製、スキャン法の確立、CCD画素の偏心調整・フォーカスドリフト解消等を終え、基本システムの1次試作を行った。蛍光ビーズ像では、平面解像度0.3μm、深度方向の解像度0.2μmを実現し、数値目標を上回った。また、蛍光標識細胞標本を用いて、共焦点効果による細胞断層の観察を実現した。
V.評 価
 光で発光のon/off制御が可能な「発光タンパク質ルシフェラーゼプローブ」を活用した3次元発光イメージング用顕微鏡法の開発である。開発は順調に進んでおり、"発光基質ルシフェリン"をCaged化することにより達成目標を遥かに超えるプローブの開発に成功した。3次元発光イメージング用顕微鏡の基本システムを検討し、ピンホールアレイに起因する偏心やフォーカスドリフトを露光時間や室温調整で解消し、達成目標を超える平面/深度解像度を達成した。今後は、Cagedルシフェリンの細胞内濃度制御法を確立し、光源を白色光源からレーザーに変更した際のチューニングや3次元スキャンの時間短縮等を検討した第2試作機を作製することによって生体組織試料の実データを蓄積・解析し、本技術の早期実用化に向けた開発を着実に推進すべきである[A]。


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