資料4

開発課題名「テラヘルツ帯2次元フーリエ分光用力学インダクタンス検出器の開発」

(平成23年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  有吉 誠一郎【名古屋工業大学大学院 工学研究科 機能工学専攻 助教】
中核機関 :  名古屋工業大学大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 テラヘルツ帯での2次元分光技術は、ソフトマテリアルなどの物性研究や応用開拓のために有効な可能性を秘めた技術であり、本課題では、2次元フーリエ分光システムへの適用を念頭に置き、従来の半導体ボロメータに比べて1桁以上の優れた検出感度と高速応答を併せもつ超伝導・力学インダクタンス検出器アレイを開発し、2次元フーリエ分光の実現に不可欠な要素技術を確立する。
U.中間評価における評価項目
(1)画素検出器の作製
 検出器の性能として、周波数帯域は共振器サイズを100倍に拡大して作製した室温モデルによる評価から、周波数帯域0.2〜2THzで、リターンロス-3dB以下の帯域特性を確認した。共振Q値については温度3.2Kにおけるマイクロ波共鳴吸収特性の-3dB帯域幅によるQ値として27,000を達成した。応答時間については、1THz以上の高強度短パルス光源であるTPO光源を用いて応答速度の評価を予定したが光源の安定性が不十分なため、可視光LEDパルスを用いた応答速度の評価を行う予定である。動作温度は、無冷媒冷凍機を用いて、実際に動作温度3.2KでのSpiral-MKIDの安定動作を達成している。
(2)画素検出器の設計
 共振Q値(無負荷)については、サファイア基板上でのNbN製Spiral-MKIDの共振特性の電磁界解析(Sonnet)による最適化の結果、3GHz帯で2.8×105という高いQuality Factor(無負荷Q値)を達成した。アンテナ動作帯域は、Spiralアンテナ動作の3次元電磁界解析(XFDTD)により、0.2〜5THzで、リターンロス-7dB以下の広帯域特性を達成した。平成24年1月24日に、特許名称:マイクロ波動力学インダクタンス検知型テラヘルツ波センサおよびテラヘルツ波検出システム(出願番号:特願2012-11960)を出願し、権利化申請中である。
(3)読み出しシステムの構築
1画素読み出しに関して、LabVIEWを用いた計測システムを構築するとともに1画素検出回路を製作し、擬似マイクロ波信号を用いた動作検証を行うことで、当初の目標を達成した。今後マルチアレイ化を進める予定。
V.評 価
 テラヘルツ領域での二次元フーリエ分光において利用する超伝導アレイ検出器を目的とした要素技術の開発である。スパイラル型テラヘルツ検出器の開発において、周波数帯域のチェックがモデル実験に留まっているが、共振Q値、動作温度、数値解析、特許申請、回路の動作検証や高品質の超伝導膜の開発においては、中間開発目標を達成している。今後、周波数帯域、応答特性を早急に見極め、開発を着実に推進するべきである[A]。


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