チームリーダー : |
伊東 祐博【(株)日立ハイテクノロジーズ 先端解析システム第一設計部 統括主任技師】 |
サブリーダー : |
牛木 辰男【新潟大学教育研究院 医歯学系 教授】 |
中核機関 : |
(株)日立ハイテクノロジーズ |
参画機関 : |
新潟大学、(株)ナナオ、静岡大学 |
- T.開発の概要
- 既に開発されたプロトタイプ機は、高倍率のリアルタイムステレオ観察実現のため、軸外収差を低減させる電子光学系(収差低減光学系)技術を採用している。しかし、収差低減光学系を設定するには、多くのマニュアル操作を必要とし、操作性に課題がある。本開発では、主にこの課題を解決するためグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)を含めた収差低減電子光学系設定の制御ソフト作成、電子光学系の構成見直しと共に、裸眼対応高解像度立体表示装置の開発を行う。
- U.事後評価における評価項目
- (1)リアルタイムステレオ観察を可能とする走査電子顕微鏡(SEM)の開発
- 収差低減電子光学系の設定の高精度化かつ簡略化を進め、ユーザーが使用した場合に通常のSEM観察と同等の操作でリアルタイムステレオ観察を可能とする制御の実現を目指し、2タイプのSEM開発を行った。1タイプ目(低真空、低倍率)は目標を達成し、平成24年5月に上市を達成したが、2タイプ目については震災の影響もあって傾斜角度が設計値を達成できておらず、低真空下で2万倍の倍率を達成するための開発を継続中である。
- (2)3次元液晶モニタの開発
- バックライトの小型化を行い、卓上に設置して操作が可能なサイズを実現することを目標に、楕円ミラータイプとフレネルミラータイプの開発を行った。フレネルミラーは画質と小型化の点で優位性が確認できなかったので開発を中止し、楕円ミラーに絞って開発を進め、ほぼ目標通りの仕様でモニタ単体として平成23年度に商品化することができた。
- (3)その他
- アプリケーション評価については、プロトタイプ機等で生物試料やナノ構造体のステレオ観察を行い、その有用性を実証すると共にSEM装置開発に対する改善点を提案した。さらに、SEM装置内での試料の操作を可能とするマニピュレータを試作し、その有用性を示した。ステレオSEMとマニピュレータの組み合わせによるシナジー効果が期待され、分析装置の新しいジャンルが切り開かれることとなる。
- V.評 価
- 走査電子顕微鏡の3D化は、そのユーザビリティーや応用の可能性を大きく広げる。高倍率観察用ステレオSEMの開発では傾斜角度などの未達項目が残ったが、低倍率用のステレオSEMの開発では目標性能を達成し、商品化することができた。高倍率型も継続して開発中である。また、モニタでも目標を達成した楕円ミラーを開発し、商品化を実現している。さらに、SEM装置内で試料の操作を可能とするマニピュレータの開発にも成功している。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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