資料4

開発課題名「非侵襲メラノーマ診断装置の開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  中村 勝重【三鷹光器(株) 代表取締役】
サブリーダー :  宗田 孝之【早稲田大学 理工学術院 教授】
中核機関 :  三鷹光器(株)
参画機関 :  早稲田大学
T.開発の概要
中核病院に紹介されるメラノーマ患者には、すでに侵襲的処置や不適切な治療が施されていることが多い。その理由は初期診断の困難さや不用意な病理検査などに起因する。そのために治療が困難になる場合もある。本開発では、メラノーマの本質である臨床的所見の多様性、つまり病変の色形や性状の“ 不規則性”を客観的数値と画像で評価し、かつメラノーマに特徴的な血管新生に基づいた浸潤領域指定を可能にする非侵襲的・非接触的診断法を臨床現場に提供する。本装置の実用化により、メラノーマの生存率の大幅な向上が期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)被験者にやさしい、平易な操作とメンテナンスフリーの機器開発
 カメラ本体を含めた撮影部分全体を小型化すると共に、アームの先端に取り付ける「先端取付方式」を採用した実用化機、さらに、これに改良を加えた機器を製作して目標を達成した。特に、光学系とCCDカメラの受光感度等のパラメータを最適化することにより、計測時間の短縮を実現した。
(2)医師、技師が使い易く判り易い画像処理ソフトウェアの開発
 開発した機器を県立静岡がんセンターと信州大学病院に設置し、目標とした評価項目に加え、使用者および装置の設置してある場所で日常業務を行うすべての医療従事者が、これまでどおりの診療を行えるか、診断装置による測定が日常診療の妨げや負担とならないかなどについて評価を行い、良好な結果を得た。
(3)画像処理結果と突合せする病理データの確保
 機器ユーザーのもとで、合計20例の臨床データを収集した。これらのデータを基に、メラノーマをそれ以外の色素性病変から鑑別するときの方法論の改善を行った。これまでのスペクトルの多様性を表す指標に加え、患部内で最もメラニン濃度が高い部分のスペクトルと参照スペクトルとのなす角度を新しい指標とし、これら2変数に対する線形判別分析を施して最終的な鑑別指標を導入した。この新しい鑑別指標は、四肢端を除く体幹の皮膚に発症するメラノーマをそれ以外から鑑別する性能を大幅に改善できることが判った。
V.評 価
メラノーマか否かの診断・判定を、非侵襲で簡便に行える装置の開発で、旧来の装置と比べて正診率と操作性を格段に向上させている。取得できる症例数が予定を下回ったことから、当初計画から製品化が1年程度遅れているが、先行している海外製品よりも特異度が高いという面で優れており、現在、メラノーマの症例が多いオーストラリアなどでのデータ取得の可能性を検討し、製品化を進めている。今後、更に多くの臨床例を積み上げると共に、製品化し、国際標準を目指すことを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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