資料4

開発課題名「多重磁気共鳴生体レドックス画像化システムの開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  澤田 政久【日本レドックス(株) 代表取締役】
サブリーダー :  兵藤 文紀【九州大学 先端融合医療レドックスナビ研究拠点 准教授】
中核機関 :  日本レドックス(株)
参画機関 :  九州大学、(株)JEOL RESONANCE、NEOMAX エンジニアリング(株)、富士電気(株)
T.開発の概要
本事業「機器開発タイプ」で開発した、実験動物内レドックス代謝・活性酸素・酸素濃度・pH などを画像解析するシステムの実用化に向けた開発を行う。マウスを対象に空間分解能0.2mm 以下で上記の生体情報を可視化するために、複数の磁場と電磁波からなる多重磁気共鳴画像化装置と最適なプローブ剤からなるシステムを開発する。本システムにより、生活習慣病や癌などの病態解明と治療薬の画像解析が可能となり、新たな治療法の創出と人類の健康に貢献する。
U.事後評価における評価項目
(1)高分解MRI部の開発
 高分解MRI部は、1Tないし1.5Tの磁場強度に於いて0.1mmの空間分解能を達成した。本開発では永久磁石方式を採用し、その中でも最も強い磁場強度を有するネオジム磁石により1ないし1.5Tの試料移動型高磁場OMRI(Overhauser enhanced MRI)を開発することで、当初の目標である0.2mmの空間分解能をしのぐ0.1mmの解像度を達成した。また、最終的に動物を撮像するためには直線移動型では動物に対する負荷が高いため、周回型システムとして開発を行った。
(2)ESR励起部の開発
 ESR励起部は、独立3磁場から、円弧型1磁場にすることでOMRIの感度が約2倍向上した。ESR励起を連続的に可能な円弧型ESR励起磁石を新規に開発することで均一磁場の確保と長いESR励起時間の確保を同時に行うことが可能になった。円弧型1磁場化によりESR励起時間(目標値は200ミリ秒)は700ミリ秒以上となっており、大幅な画質向上を達成した。磁場均一性についても独立3つの磁場に比べ高い均一性を達成することができた。
(3)動物移動装置の開発
動物搬送装置は、マウス個体用複合共振器を2個接続可能とした。また、試料搬送速度を2m/秒にあげても鮮明な動物撮像が可能であった。動物の移動方法を周回型としたことで当初予定の1m/秒の移動速度を2m/秒としても撮像中は等速度のため動物に対して負荷無く解析が可能となった。また、MRI分光部とESR磁石が当初の目標よりも大幅に向上・改善しているため、2m/秒の移動速度での撮像において充分なESR励起を得、短時間(1m/秒の半分の計測時間)で鮮明なラジカル画像を取得することが可能となった。
V.評 価
分子プローブの電子を特異的に励起し、MRI画像の信号強度変化を生じさせてフリーラジカルを間接的に観測可能な、オーバーハウザー効果を利用したOMRIの開発である。潰瘍性大腸炎やガン、糖尿病などで活性酸素による障害が明らかになりつつあり、モデルマウスをつかって潰瘍性大腸炎の炎症の大きさを画像として得ることができた。研究用の機器として販売可能という見込みを得ることができた。また、本装置に使う試薬はすでに販売されており、装置を利用可能な環境を整えたことも成果として上げることができる。今後、世界の市場への進出も含めて、小動物を超え、人体の計測を可能とすることができれば、更に大きな発展が期待できる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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