資料4

開発課題名「走査プローブ顕微鏡シミュレータの開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  柿沼 良輔【(株)アドバンストアルゴリズムシステムズ 代表取締役】
サブリーダー :  塚田 捷【東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 教授】
中核機関 :  (株)アドバンストアルゴリズムシステムズ
参画機関 :  東北大学
T.開発の概要
本事業「要素技術タイプ」で開発した走査プローブ顕微鏡シミュレータのソフトウェア機能を強化し、操作性を改善する。さらに、これらのソフトウェアを連携させ、統合システムとしての効率化と高能力化を実現する。非専門家でも使用できるソフトウェアとして実証・実用化し国内外に普及させることで、さまざまな分野での走査プローブ顕微鏡の利用を促し、ナノテクノロジーの発展に寄与することを目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)シミュレータの改良
 各ソフトウェアのチューニングを行い、操作性と信頼度を充実させた。適用可能な対象試料の増加に関しては、各種(AFM/STM/KPFM)量子力学的計算法に必要な元素に関するパラメータの増強を行った。各シミュレータとGUIの統合化に関しては、各シミュレータの操作性やデータを統一し、統合システムとしての効率化と高性能化を実現した。探針によるナノ加工プロセスのシミュレーションに関しては、原子分子レベルのエネルギーおよび力の計算を可能とし、化学反応の素過程を調べることを可能にした。液中AFMシミュレータでは、3次元RISM法の実装を行い、バイオ系・高分子系に対応する計算を可能にした。
(2)シミュレータの普及
 平成23年6月末に、開発中の各ソフトウェアを試作版ソフトウェアとして纏め、インターネットを通じて無償配布を開始した。その後11月には海外ユーザー向けにも英語版ソフトウェアの無償配布も開始した。その結果、現在までに約660本のソルバーを配布した。また、普及に向けて、国内向けにはチュートリアルセミナーを開催する一方、海外向けにも、国際会議でランチョンセミナーおよびポスターにてソフトウェアの紹介を行うと共に情報交換のためのウェブサイトも開設した。これらを通し、SPM潜在的活用候補者に対して販売普及情報を開示し、当初の目標を到達した。販売に関しては、本ソフトウェアの価格設定を行い、販売代理店と交渉後、平成24年6月末から販売を開始した。
(3)その他
目的には掲げなかったが、非専門家に対する補助機能としてモデリング機能を開発した。また、原子分子ナノ材料AFM像シミュレータで必要となる力場パラメータを自動的に生成し、プロテインデータバンクの原子構造データに対して水素原子付加を行えるようにした。また、局所接触電位差によるKPFM像のシミュレーション計算法を考案し、実験と対応することを確認した。さらに、接触力学の効果も含めたマクロレベルAFMのシミュレーション理論を考案し、シミュレータの試作版を開発した。
V.評 価
本事業「要素技術タイプ」(汎用走査プローブ顕微鏡シミュレータ)を基にして、ユーザーやSPMメーカの要望を取り入れることによって、開発目標以上の信頼性と操作性の良いシミュレータの開発に成功した。また、普及に向けて内外への情報発信も複数の手段を通して着実に行った。本シミュレータは平成24年6月末に販売を開始しており、SPMのデファクトスタンダード的なソフトウェアとしての普及を期待する。本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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