資料4

開発課題名「多孔性材料の細孔分布解析ソフトウェアの開発」

(平成21年度採択:ソフトウェア開発タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  宮原 稔【京都大学大学院 工学研究科 教授】
サブリーダー :  仲井 和之【日本ベル(株)代表取締役】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  日本ベル(株)
T.開発の概要
粉体材料・多孔質材料のマイクロ・メソ細孔分布は主にガス吸着等温線から解析されており、これまでに日本ベル(株)は世界最高レベルのガス吸着等温線測定機器の開発に成功している。また、京都大学では理論計算・分子シミュレーションを用いたガス吸着挙動の研究によって、さまざまな材質・形状・サイズを持った各種細孔モデルに対する吸着等温線のデータベース構築手法の確立に成功している。本課題ではこのデータベース(Kernel)の構築を広範に実施し、本プロトタイプ機によって得られた吸着等温線から、多孔質材料の細孔構造を精密に解析するための新規ソフトウェアを開発することを目的とする。
U.事後評価における評価項目
(1)細孔分布解析ソフトウェアGUIの開発
以下5項目の仕様を満たした細孔径分布(PSD)解析ソフトウェアGUIの開発を完了し、目標を達成した。1) プロトタイプ機により測定した吸着等温線データのインポートとグラフの表示機能を有する。2) インポートした吸着等温線データの補完機能(適切なPSD計算のため)、および補完結果のグラフ表示機能を有する。3) ユーザーがPSD計算のためのkernel(下記(2)(3)(4))選択を行うことができる。また、将来のkernel追加が容易なソフトウェア構成とする。4) PSD計算ルーチンを起動し、吸着等温線データに対するkernelのフィッティングおよびPSDの計算を実行させる。5) 吸着等温線データに対するkernelのフィッティング結果、PSD計算結果のグラフ表示、およびデータのエクスポート機能を有する。PSD解析用吸着等温線の測定を実施し、上述のPSD解析ソフトウェアによる解析およびその妥当性(正確性)の確認を行ない、他の測定法による種々の実験事実と一致した。
(2)スリット型細孔をモデルとするkernelの作成
  GCMC法、開放セル法、Gauge Cell法、NLDFT法のコード開発を全て完了し、開放セル法により得られる熱力学的気-液平衡転移点を経るlocal isothermからなるkernelの構築を完了した。
(3)シリンダー型細孔をモデルとするkernelの作成
 (2)と同様、全てのコード開発を完了し、熱力学的気-液平衡転移点を経るlocal isothermからなるkernel、およびGauge Cell法により得られる気相-準安定限界点を経るlocal isothermからなるkernelの構築を完了した。
(4)ケージ型細孔をモデルとするkernelの作成
 (2)と同様、全てのコード開発を完了し、Gauge Cell法により得られる気相-準安定限界点を経るlocal isothermからなるkernelの構築を完了した。
V.評 価
ガス吸着装置プロトタイプ機に対応した細孔径分布解析のためのソフトウェアの開発であり、より広い細孔径分布の正確な解析を可能とした。目標とする機能は達成されている。さらに本ソフトウェアの外部機関を用いたユーザー評価が実施され、ソフトウェアの性能・操作性などに対する要請がフィードバックされている。合わせて、解析結果の妥当性(正確性)も他の実験結果とのクロスチェックにより検証済みである。開発後のソフトウェアの維持・管理および保守・更新にも配慮がなされ、本ソフトウェアを搭載したプロトタイプ機が、ナノ多孔質材料開発へ広く普及することが見込まれる。ホームページで各種多孔体の数値データ、解析用ソースコードの公開を計画する等、成果の普及にも努めている点も評価できる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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