資料4

開発課題名「糖鎖による診断システム統合ソフトウェアの開発」

(平成21年度採択:ソフトウェア開発タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  西村 紳一郎【北海道大学大学院 先端生命科学研究院 教授】
サブリーダー :  福島 信弘【サイエンス・テクノロジー・システムズ(株)代表取締役社長兼技術部部長】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  サイエンス・テクノロジー・システムズ(株)
T.開発の概要
血清中糖鎖の定量的発現プロファイルに基づき疾患診断情報を与えるまでの一連の工程を全自動化する「全自動糖鎖プロファイル診断システム」に対する統合的なインターフェースを有するソフトウェアを開発する。前処理・測定・プロファイル解析・疾患診断に関するアプリケーション群を実装した統合インターフェースの開発、および測定機器とサーバー間のセキュアな通信を付加させた医療機器対応の診断システムの構築を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)統合インターフェースの開発
自動糖鎖前処理部、機器制御部、マススペクトル測定部、糖鎖ピーク処理部、糖鎖ピーク解析部それぞれのソフトウェアシステムを連動するように見直し、各システムを連結するインターフェースを開発した。また、最終的な統合インターフェースの要求分析書、仕様書、プログラム設計書を作成した。
(2)サーバー・クライアントシステムの構築
  サーバー間のセキュアなデータ通信が行えるようにVPNで接続し、VPDISKを用いてファイルシステムを暗号化して、セキュリティを確保した。また、サーバーの稼働状況を把握するツール(Xymon)、大量処理に対応したバッチ処理システム(SGE)を導入して効率的運用を可能にした。さらに、測定データの定期的バックアップ運用システムを構築した。
(3)疾患判断アルゴリズムの実装
 質量分析データからの糖鎖ピークの同定及び検量線を用いた定量法の精度向上を行い、糖鎖アノテーションの精度向上を可能にした。その結果、複数の疾患マーカーを選定できるようになり、ROC解析の手法を加えることよって疾患判定の精度向上に寄与することが出来た。
(4)稼動実験
 医学研究科と連携して受け入れた疾患サンプルなど(肝細胞がん(288検体)、肝炎(144検体)、健常者(52検体)など)について糖鎖プロファイルの測定を行い、肝がんと健常を識別できる糖鎖マーカーを発見した。この知見を用いた診断については、マーカーとなる複数の糖鎖を軸とした散布図によって疾患となる閾値から、健常と肝がん、肝がんと肝炎それぞれ区別できることを見出した。また、ウィルス性肝炎から肝がんへ移行する糖鎖マーカーの探索にも成功した。以上により100%目標を達成したと言える。
V.評 価
血清中の糖鎖による疾患診断システムのソフトウェア開発で、すべての目標はクリアできている。疾患判定は肝がんとリウマチを中心に進められたが、健常者と肝癌、肝癌と肝炎などの判定も可能なことを示している。またリューマチに関してもマーカーが見出されている。さらに疾患マーカー候補が自動で導き出す可能性が見えて来たことは評価に値する。本ソフトウェアによりクラウド時代に合致した診断サービスが提供されることが可能となったが、臨床用機器に伴うソフトウェアとしては、ユーザーの評価が重要であり、今後、データの蓄積など、事業化へのさらなる努力が必要であり、今後の取り組みに大いに期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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