資料4

開発課題名「HiCEP ピークデータベースの開発」

(平成21年度採択:ソフトウェア開発タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  安倍 真澄【放射線医学総合研究所 特別上席研究員】
サブリーダー :  湯野川 春信【(株)メイズ 代表取締役】
中核機関 :  放射線医学総合研究所
参画機関 :  (株)メイズ
T.開発の概要
未知のものも含む転写物の定量観察により、ゲノム情報の有無に係わらず全生物の網羅的遺伝子発現解析を可能にした方法(HiCEP法)を確立し、これまでその微量化、自動反応プロトタイプ機の作製など、高度化に取り組んで来た。今回、HiCEP解析を行う多くのユーザーが、解析後、分取ステップなしに効率的にピークの遺伝子情報を入手できるように、ピーク配列のデータベース化およびその公開システムの構築を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)評価用データの取得
マウスES細胞、ヒト末梢血(単核球)、ムレミカヅキモの3生物種について転写物ライブラリーとして大量にシーケンスデータを取得し、開発したシーケンス/ピーク対応付けソフトウェアによりデータベースを作成した。この過程において、ライブラリーの作成法、各シーケンサーメーカーのシーケンシング手法等、幅広いユーザーに対応できるように検証を進め、データベースを公開して普及促進が可能な基盤が構築され、目標を達成した。
(2)シーケンス/ピーク対応ソフトウェアの作成
  3生物種のデータを用いて、作成したプロトタイプ版ソフトウェアの基本性能の向上を進めた。また、1)相同性の高いクラスタ同士の分類アルゴリズム、2)全長塩基配列が取得できていない配列の利用アルゴリズム、3)ホモポリマー部シーケンシングエラーの検出と修正アルゴリズム、および、4)クラスタリングアルゴリズムの改良を行うことにより、データ処理高速化の実現、目標とする70%以上のピーク対応実現等、大きな改善が得られ、目標を達成した。さらに、開発したアルゴリズム、およびデータベース作成ソフトウェアの特許を出願して技術基盤の強化を図るとともに、ユーザーにも応用できるように最終版ソフトウェアの公開を果たした。
(3)評価用閲覧システムの作成
  ユーザーによるデータベース評価を可能にするため、「評価用閲覧システム」を3生物種のデータで評価を行い、最終版を開発した。また、その機能を関連付けソフトウェアに付随させ、オープンソースライセンスにて公開し、目標を達成した。
V.評 価
HiCEP法の過程で創出されるアダプターが付加されたDNA断片集団を、物理的断片化を行うことなくリード/フラグメントを取得する方法で、内部配列の同定が容易となり、次世代シーケンシングのデータベース化を可能にした。遺伝子配列情報なしで高精度に多数の遺伝子に対して網羅的にその発現量を計測できる技術である。開発は順調に進捗し、すべての目標を達成し、知的財産も確保され、オープンソース化を実施しているとともに、第3者によるデータベース開発参加も見られ、技術の普及も始めている。事業化の方針も明確であり、医療、創薬、農業、漁業等幅広い分野を含めたHiCEP研究会を立ち上げて普及活動を開始しており、ビジネス展開が期待できる点も評価に値する。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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