資料4

開発課題名「革新的PET用3次元放射線検出器の開発」

(平成21年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  山谷 泰賀【放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター チームリーダー】
中核機関 :  放射線医学総合研究所
参画機関 :  千葉大学(工、フロンティアメディカル工学)、東京大学、浜松ホトニクス(株)
T.開発の概要
分子イメージング研究に不可欠とされるPET装置の高性能化と普及を目指し、最先端技術を集約した革新的アイディアに基づく新しいPET検出器「クリスタルキューブ」を開発する。具体的には、シンチレータを超小型の半導体受光素子MPPCで取り囲み、シンチレーション光の効率的検出と高度解析により、究極とされるサブミリオーダーの等方的分解能の実現を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)クリスタルキューブ検出器のフィージビリティ評価
 幾何学的位置推定手法および情報学的位置推定手法を開発により、位置弁別アルゴリズム手法を確立し、パルスサンプリングのパラメータ最適化による時間弁別アルゴリズム手法を確立した。シンチレータサイズ3mm、2mm、1mmそれぞれについて等方的分解能を達成し、3mmサイズのシンチレータにMPPCを接続した状態で、280psの同時計数時間分解能を達成した。
(2)モノリシック・シンチレータブロックの開発
モノリシック・シンチレータブロック内光学特性の詳細設計を行うシミュレータをGPU実装し、CPU単体と比較して最大で430倍の高速化を達成し、モノリシック・シンチレータに外部からレーザー照射を行い光学的不連続面の3次元アレイ構造を内部に形成する手法を確立し、セグメントピッチを1mmにまで微小化することに成功した。
(3)MPPC用読み出しASICの開発
 MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)用ASIC(Application Specific Integration Circuit)を開発し、検出部(シンチレータ)から検出器フロントエンド回路までを含む検出器モジュールの外寸法を、26mm x 26mm x 170mmにまで小型化した。
(4)検出器モジュールの試作と評価実験
 直径14.6cmのリング状PET装置を想定した1mmピッチのクリスタルキューブの評価実験を行い、一列に並べた6個の点線源を画像化した。PET画像において、視野内で均一な平均0.86mmの空間分解能が得られることを実証した。
V.評 価
PETの高性能化・小型化等を目的とした新奇な3Dシンチレータの開発である。レーザー加工とASICの開発とともに、二つの短い強力パルスレーザーをつかって1mmピッチ18×18×18のクリスタルキューブの作成に成功し、コンパクトなASICを作成した。MPPCベースのDOI(3次元放射線位置)検出器の開発は、世界的な開発競争下にあるため、世界に先駆け、スピード感を持って開発を進める必要がある。そのため、PETシステムとして効果を実証し、早期に実用化を図ることが望ましい。今後、計測分析機器メーカーが中心となって本開発成果が早期に製品化されることを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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