資料4

開発課題名「革新的粘弾性計測手法実現への要素技術開発」

(平成21年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  石原 進介【京都電子工業(株)開発推進部 テクニカルエクスパート】
中核機関 :  京都電子工業(株)
参画機関 :  東京大学 生産技術研究所
T.開発の概要
流体を工業的に扱う際に、粘弾性特性が重要な物性値となる。この計測には、数十年前に開発された計測方式が今でも使用されている。本開発は、新たな方法論をもとに、非接触かつ少量の試料で粘弾性を計測可能な装置の開発を目指す。この開発により、新規材料開発、希少価値の高い医療分野などへの応用が可能になるとともに、簡便に測定ができることにより、計測機会を増大させることが期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)電流制御型磁場生成方式による粘弾性計測の実現
 動作検証モデルにより試料セット部の空隙を確保しつつ、回転子位置において最大強磁場106.7mTを達成した。磁場強度のフィードバック制御を用いた駆動回路により、各種外乱の影響を受けない安定強磁場を可能とし、実用的な回転磁場周波数を1〜100Hzまで±0.01%の精度で2オーダー変化可能である。磁気回路を最適化し、専用電気回路基板を作成して、これらをコンパクトなデスクトップ機器として構築した。加えて、周波数重畳により得られるパルス応答計測により多周波同時測定を実現した。
(2)高性能計測を可能とするセンシング部開発
電流制御型磁場生成方式の検証機構で、再現性が最終目標のCV10%以下を実現でき、電流制御型磁場生成方式においても永久磁石回転方式並みの精度が達成できた。最終目標200μL以下で、操作性の難や精度に影響を与えることなく測定でき、シミュレーションと実測値も良好な一致を示した。試料温度調整機構の温度範囲や温度分布のシミュレーションを行い、その解析結果を基に精密温度制御を開発し、±0.1℃の安定性を達成した。
(3)実効せん断速度の理論的裏づけと実験的検証
回転子の代表的なせん断速度を表す実効せん断速度の定式化モデルを解析的に得ることができた。その解析で得られた係数と非ニュートン標準液の実測値から得られた換算係数には良好な一致が得られ、モデルの妥当性が実証された。微小球を用いた低粘性領域計測により、摩擦の効果を低減し測定精度を大幅に向上することができた。さらに球の慣性モーメントが小さくなるために、広帯域の粘弾性計測へ可能性を拡げた。
V.評 価
極微小量の液体粘度を測定するための要素技術の確立を目的とした開発である。磁界の強度と回転周波数を目標どおり達成し、装置に100μm径の微小アルミ球を採用することで、200μLの少量試料でもCV値4以下と低粘性領域の粘度を精度良く測定する新たな要素技術を確立した。また、当初目標に無かった浮上ディスク型の測定で、難度の高い水などの低粘度液体を精度良く測定できる要素技術開発に成功したことは、今後のバイオ研究や工業現場での、より精密な分布や変化の評価手法として広く活用が期待できる。今後は、本技術の着実な実用化とともに、国際標準化に向けた取り組みを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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