資料4

開発課題名「SPECT用分子イメージングプローブの開発」

(平成20年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成20年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  荒野 泰【千葉大学大学院 薬学研究科 教授】
中核機関 :  千葉大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
生きたままの生体の機能を画像で捉える分子イメージングは、病態の解明や高度な画像診断、治療法の決定、新薬開発の迅速化と効率化に大きく貢献する。本課題では、汎用性に優れたSPECTによる分子イメージングの推進を目的に、1価の配位子とテクネチウム-99m(99mTc)との混合配位子錯体の形成により、標的分子への高い結合親和性を有する多価の99mTc標識プローブを与える基盤技術を構築する。
U.事後評価における評価項目
(1)2価混合配位子99mTc錯体を用いたインテグリンおよびヒドロキシアパタイトの分子イメージング
 D-Penicillamine(Pen)を用いる2価の99mTc標識および非放射性レニウム錯体の合成方法を確立した。また、RGDペプチドを標的分子認識素子に用い、99mTc標識プローブの水溶性の向上が腹部放射活性の低減に有効であることを示した。造骨部位で亢進するヒドロキシアパタイトのイメージングでは、従来の薬剤に比べて骨疾患部位へ選択的に集積された。腹部の放射活性を低減するためのスペーサ構造が今後の課題である。D-Penを用いる2価99mTc標識プローブを用いた腫瘍の画像化を小動物用のSPECT*/CTで評価した。本薬剤設計により腫瘍の描画が可能であることを認めると共に、腹部への非特異的な放射活性を低減するための分子構造の改良を行う必要があることがわかった。オリゴアスパラギン酸についても、同様の評価を行い、従来の薬剤に比べて骨疾患部位へ選択的な集積を示すことがわかった。 *Single Photon Emission Computed Tomography
(2)3価混合配位子99mTc錯体の分子イメージングへの応用性評価
 [99mTc(CO)3(OH2)3]を用いる3価の99mTc標識および非放射性レニウム錯体を高い放射化学的収率で与える反応条件を明らかにした。しかし、目的とする99mTc標識プローブの合成には、Penに比べて高い配位子濃度が必要とされること、副反応物として99mTcO4-が生成することから、酸素を除外した条件での標識反応についての検討を進めている。RGDペプチドを標的分子認識素子に用いて検討した結果、本化合物の場合も99mTc標識プローブの水溶性の向上が必要となり、その最適化を進めている。インテグリン発現細胞を用いて、99mTc標識プローブの細胞への結合親和性とスペーサ構造との関係についても精査している。また、オリゴアスパラギン酸は分子サイズの増加を疾患骨への選択性の向上に利用することから、現在は、本コアを用いた検討を進めている。本化合物については、標識反応の最適化も必要である。
V.評 価
サイクロトロン等の大規模な施設を必要とせず、より長時間追跡可能なテクネチウム錯体を用いたSPECT用プローブを目的とした要素技術の開発である。本開発の成果により、がんをイメージング可能なテクネチウム錯体の合成に成功した。しかし、合成したプローブは脂溶性が高いために、必ずしも選択的に集積せず、少なからず生体バックグラウンドの影響があるため、現時点で、従来のプローブに取って替わるまでの性能とはならなかった。今後は開発チームにおいて既に着手されている分子構造の改良を進め、臨床応用が可能なプローブが完成することを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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