資料4

開発課題名「ハイスループットタンパク質生産システムの開発」

機器開発タイプ(領域非特定型)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  田丸 浩【三重大学大学院生物資源学研究科 准教授】
サブリーダー :  橋本 正敏【橋本電子工業(株) 代表取締役社長】
中核機関 :  三重大学
参画機関 :  橋本電子工業(株)
T.開発の概要
魚卵発現系を用いた全く新しいタンパク質生産システムを開発する。本開発では、ゼブラフィッシュの受精卵を宿主とし、組織特異的なタンパク質発現ベクターを用いることで、これまで発現が困難であった膜タンパク質や細胞毒性を示すタンパク質も生産可能である。受精卵の自動回収装置と1時間に3,000個の受精卵に遺伝子導入可能な装置によりハイスループット化を実現する。これにより、多くのタンパク質の構造・機能解析が加速度的に進展し、創薬や医薬品製造などの産業応用も期待できる。
U.事後評価における評価項目
(1)受精卵自動回収装置の試作及び基本性能評価
 産卵に適した水槽ユニットを使用し、メンテナンスが楽な 受精卵自動回収装置 を開発した。1日当たりの 卵自動回収量は5,000個以上/日と 若干最終数値目標には至らなかったが、卵自動回収率はほぼ100%で 最終数値目標を大きく上回った。
(2)卵整列固定装置の要素技術確立及び試作
  市販蛍光プレートリーダーに装着可能な308穴卵整列固定プレート(SBS規格準拠)を使用した 卵整列固定装置 を試作した。卵整列固定速度は 1分15秒/プレートで、卵固定の成功率 95%以上であり、最終の数値目標を達成した。
(3)マルチプル・インジェクション装置の機能試作及び基本性能評価
インジェクション成功率90%以上のマルチプル・インジェクション装置を開発した。ゼブラフィッシュ受精卵の発生率は 約70%、GFP遺伝子を指標とした標的タンパク質の発現率は 約25%であり、手動によるインジェクションと遜色無い性能であった。1時間に10,000個以上のインジェクションを可能とするので、ハイスループットを実現できることが確認できた。
V.評 価
ゼブラフィッシュ受精卵を使って、ハイスループットにタンパク質試料の調製を行うシステムを開発する課題である。ゼブラフィッシュ受精卵が水中で分散性であることを利用し、自動連続的に回収するシステムを開発し数値目標を達成した。また、卵整列固定装置とマルチプル・インジェクション装置を連結して、数値目標を超えるハイスループットな遺伝子インジェクション装置を開発した。最先端技術の装置ではないが、ユニークで将来性のあるシステムが開発された。今後の実用化に向けた取り組みが期待される。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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